2020年12月29日火曜日

投資情報が役に立つということと情報発信の責任

はじめに


最近見ると(私が見るようになったからですが)、投資情報というものは随分氾濫するようになってきました。
情報を鵜呑みにしてはいけないといいつつ、中々難しい世の中ですが、何が「有用」で「役立つ」のかということを少し考えてみたいと思います。


前提 投資に正解はない


世の中、正解がないことは殆どなのですが、実際は正解があるか正解に近しいものはあると思っている(思いたい?)人は多いです。
学校教育という人格形成に大きく影響を与える場で、正解のあることしかやっていないので、そこから脱却できない人が多いのではないかと推測するのですが、どうでしょうね。

誤解を恐れずに言えば、「正解に近しい"かもしれない"もの」はあるにはあります。
結構な人がインデックス投資というのではないでしょうか。問題は、それが「正解に近しい」と判断するのにも知識がいることですが。
ただ、私が「かもしれない」とつけるのは、やはり目的によっては正解に近くない場合があるということと、どのチャンネルから情報を集めてもたどり着く結論ではないことによります。

正解というからには、どのチャンネルから情報を集めていっても、「嘘」・「間違い」以外ではたどり着かないとならないのではないかと考えますが、インデックス投資はそこまでのものではありません。


本題 役に立つ投資情報を見つけるために


先ほど述べた通り、投資に正解はないという事実を受け入れるとすると、正解ではないものの「勝ち筋」を見つけなければいけません。
筋がないと、自分に必要な情報、不要な情報が判断できません。
もちろん、その筋が正しいかどうかは、どこかで振り返りをしないと、誤りや間違いに気づけないのでいけませんが、それは別の話ということで。

具体的にこの筋が何かといえば、わかりやすい例を挙げれば、チャートだけを見てトレードするとしましょう。そうすれば、チャートサイトは間違いなく必須ですし、移動平均線やチャートパターン、フィボナッチ等の情報も使うかと思います。
しかし、そういう人が、トレード対象の銘柄のプロダクトや決算情報を必要とするでしょうか。
使う人ももちろんいるでしょうが、「チャートだけを見てトレードする」と決めているのであれば、それらの情報はノイズになるかもしれません。
チャートパターンで売りなのに、決算がいいからホールドしてしまうかもしれません。

これとて間違いかどうかは、後からしか判断できませんが、「航路を守れ」という言葉でいえば、航路は逸脱しているので間違いと見なした方が、良いかと思います。
そうだとすれば、ホールドの誘惑にかられた決算情報は有害でしかなかったことになります。

しかし、別の投資家からすると決算がよいのに下がるのであれば、買い増すという判断をするかもしれません。
これが短期的バリュエーションの調整であり、この先もっと上がるのであれば、それはそれで正解ではないでしょうか。

例え話が長くなりましたが、筋が違う人・内容の情報は、その情報に価値があったとしても、その情報に労力がかかってたとしても、受け取り手にとっては有害、マイナスの価値しか生まないことがあるということになります。


情報発信をしたいならば


情報化社会になり、益々情報発信のハードルが下がりました。
このような駄文すら発表できるほどです。
しかし、私の様に自分の思考をまとめた程度のものならば、チラシの裏なのでいいのですが(自分に甘い!)、有料での発信も簡単にできるような時代になりました。

有料の情報自体は全く否定する気はありません。資本主義社会は労働をお金に変えるところからスタートしていますから。そして、実際に情報はお金を生むからです。
「金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになる」

このような有名な漫画もありますが、お金を取るということは、金銭と価値を交換することであり、お金と同程度の価値があることについて、責任を負うという意思の表れであることは理解いただきたいものだなと思うばかりです。無料だから何してもいいということとは別です、当然ですが。

投資情報において、この責任とは何かということを考えてみた時、やはり私は「投資の筋」を明らかにすることではないのかと思うのです。

先ほどの例に戻れば、有料マガジンを購読しようか迷ったときに、テクニカルベースでブレイクしそうな銘柄を発信しますとあれば、テクニカルトレーダーはその内容を咀嚼し、自分のものとして投資できるでしょう。しかし、それが決算分析をしますというものであれば、自分の投資には役に立たないので辞めておこうという判断になるかと思います。

投資情報の価値を算定することは、非常に難しいです。人によって役に立つか否かが大きくことなるということに加え、その情報が役に立った時に得られるものとその情報が悪影響を及ぼしたときの損失が(実質的に)青天井であるからです。

だからこそ、投資情報はその人が役立てられるよう(=価値が出るよう)にお膳立てをするところまでやって、はじめてお金を取るステージに達しているのではないでしょうか。それがたとえ情報発信者にとって利益相反になる(読者が減ってしまうことにより収入が増えない)としてもです。

情報発信の入口は、正確性に努めることと人に理解させることにあると思います。

発信のハードルが下がった分、この点を意識していない人や正確性に努められるレベルに達していない人までもが、発信者になれてしまっているということは、憂慮する点です。

さらに、お金を取り、情報の価値に対して責任を取るということは、正確性とわかりやすさだけでは足りないということを理解するべきではないかと思う次第です。


アフィリエイトという裏口


さて、この世の中にはそのような金銭と価値を交換するという基本的にやり方に対して、私は「裏口」とはっきりいってしまいますが、アフィリエイトというやり方があります。

本来は、良い商品を紹介することで、紹介手数料を紹介したものの売り手からもらうというモデルですが、実際は紹介手数料を高いものをよく見せることに注力したものに汚染されてしまっています。だから、「裏口」です。

アフィリエイトをしている=その情報は有用ではない、有害というのはすごく短絡的な話だと思います。しかし、外見的に見るとその「紹介」が本当に優れたものだから紹介しているのか、(読み手には関係なく)紹介手数料が優れているから紹介しているのかを判断するというのは、非常に困難です。

その意味においては、悩むくらいならばアフィリエイト記事はすべて読まないというのが、一案のようにも思います。
アフィリエイトかどうかは、リンクを踏んだ時にアフィリエイトのIDが入っているとか、アフィリエイトプロバイダーのURLになっているかとかでわかる場合もありますので、ご参考までに。


初心者向けという闇


誰でも初心者時代はあります。そして、初心者には当然ながら筋はありません。それを見つけられる人は、中級者と呼ばれるのが妥当ではないでしょうか。
だからこそ、発信者にはより誠実である必要があると思うのですが、○980円の有料noteみたいなお金稼ぎの人が入りやすい場になっています。

冷たい言い方をすると、その程度の輩に騙されるなら投資はやらない方が幸せかもしれないとも言えるかもしれません。
しかし、ゲーセンが初心者を冷遇して廃れていくのと同じで、新しい投資家を受け入れられなくなったらおしまいではないかと思うのです。

ただ、この点について私は良い手段が思いつきません。
何か思いついたら追記するかもしれません。

結論


投資情報を役に立つ、立たないと判断するためには、まず自分の筋が必要です。
その判断を人に委ねてはいけません。あなたの人生であり、あなたの投資だからです。

よって、私は投資情報については、推奨は多少しますが、その逆はしません。
自分の筋に合わない情報でも役に立つ人はいるでしょうし、役に立たないものを役に立たないというメリットも義理もないので。せいぜい、悪質なものがあれば注意喚起するかもくらいです。

投資発信者になるのであれば、最低限の正確性やわかりやすさだけではなく、どうやって受け取り手がその情報を活かせるのか、発信者の筋を明らかにするべきです。
目的が違う、時間軸が違う、手法が違う、そのような投資の世界において、普遍的に正しい・役立つ情報はありません。そう思うのは、発信者の驕りでしかないです。

日本占領と「敗戦革命」の危機(江崎道朗著)

日本占領と「敗戦革命」の危機
日本崩壊の真の危機は戦後にあった。米中に浸透した共産主義者たちが仕組んだ敗戦革命プログラムの恐怖を白日の下に晒す驚愕の書。

はじめに


本書は、大東亜戦争~GHQによる日本占領の前期までにおける、共産主義者の動向とそれに対峙する昭和天皇や自由保守派の暗闘を示すものです。

これらの歴史から我々が学ぶべきことは、全体主義・共産主義がどのように社会を混乱させ、自分たちの都合の良い「革命」を起こすのかという一つの流れから、警察・公安・諜報の重要性です。

その一端を知るために、本書は有用な本ではないかと思います。


要約


個人的に現代に生きる教訓となるような箇所を抜粋しました。

第一~第三章


米国に潜むソ連のスパイや共産主義者と中共は、戦時中から既に「敗戦革命」は準備していました。
そのエピソードとして、共産主義者のフロント組織に堕ちたIPR(太平洋問題調査会)というシンクタンクというものがあり、これは民間のものでしたが、日本の支那「侵略」を非難するパンフレット(中共工作員が書いた!)をばらまいたり、戦後の日本占領計画検討に影響力を持っていたりしていたようです。

さらに、ルーズベルト政権下で組織されたOSS(戦略情報局)という情報機関も対日政策に大きな影響を与えていましたが、この組織にも共産主義者が多数入り込んでおり、情報機関のトップであるドノヴァン長官までもがNKVDに対し、欧州に潜入したOSS工作員のリストをソ連に渡そうとする有様であり、国を守るための情報機関が国益を害している有様であった。


一方、中共は、日本に留学経験のある者を使い、支那事変で日本人捕虜を獲得し、それを使って、日本軍や日本政府に影響力工作をもたらすことを目論んでいました。

ソ連は、日本人を過酷に扱いバタバタ死なせたのに対し、中共は手厚くもてなして日本人側に「恩義」を感じさせ、さらに自分たちを「日本人の敵」ではなく、「日本軍国主義の敵であり、抑圧された人民の味方」という二分法に基づく(このような手法は共産主義・全体主義者が革命に多用するロジックである)プロパガンダをしたそうです。その結果、彼らは積極的に中共に対し、協力するようになったそうです。
ちなみに、この中共延安に、コミンテルンの指示で派遣されてきたのが、野坂参三です。

さらに中共は、アジアに派遣された米軍にも接触し、国民党を貶める筋金入りの中共シンパの政治顧問が、ジョセフ・スティルウェル司令官の周りを固めていたようです。
OSSと中共、野坂も連携しており、野坂はアメリカのプロパガンダへの助言を行うなどの活動をし、OSSは中共に無線通信システムは汪兆銘政権への工作資金の提供などを行っていたようです。

第四章~五章


日本の降伏で問題だった点として、一つはルーズベルト政権下における「ストロング・ジャパン派」という日本をソ連に対抗するために使うために破壊しない派が、ソ連の息がかかった「ウィーク・ジャパン派」に敗れたこと、もう一つは日本自身がこのようなアメリカにも交渉可能な勢力があったことを理解せず、ルーズベルト政権が一枚岩と視野狭窄に陥り、その結果として、ソ連和平案しかないと考えたことで、さらに視野狭窄に陥ったことです。

もう一つ、軍幹部はアメリカが破壊する「国体」が右翼全体主義になっていたのではないか、それならば、資本主義・民主主義のアメリカより、共産主義(左派全体主義)のソ連と連携する方が良いと考えたのではないかという点も指摘します。

このような流れの中で、共産主義の危険性を指摘した「近衛上奏文」や、日本の徹底抗戦による「ウィーク・ジャパン派」の勢いが衰えた事などにより、昭和天皇のご聖断に至ったとします。


考察


本書で一番重要なことは、共産主義・全体主義が一般の人にとってどのように浸透していくかということを理解するが重要であるということです。
プロパガンダの基本的な手法である「二分法」は、アメリカにおいても日本においても格差の拡大によって、説得力を持ちやすい状況になってきています。

もう一つ挙げるならばは、昭和天皇のご聖断とその後の敗戦革命寸前の状況から日本を救ったという出来事が、なぜ実現したのかということです。
当時これを実現できた要因として、昭和天皇ご自身がインテリジェンスをご理解なさっていたこと、天皇陛下に対する国民の信頼が厚く天皇陛下の元に団結ができ、なおかつ天皇陛下もまた国民を信頼し分断ではなく団結を目指したことなどが本書では挙げられています。

今の憲法下では中々このように天皇陛下が直接的に動くことは難しく、また総理大臣以下の政治家には、残念ながら全くこのような役割は期待できないように思います。
そのような中で、敵国のプロパガンダに対し、日本の国体と自由・民主主義を御旗として、団結できるのか問われる時期が今なのではないかと思います。

では、このような状況を防ぐにはどうしたらよいかというと、私は教育以外にあり得ないと思います。全体主義が強制で自国の意思を拡散するのであれば、自由主義は知性で立ち向かうしかないでしょう。そうでなければ、全体主義と同じ方向に堕ちてしまいます。
自由主義を守るために、「自由を妨げる自由、秩序を妨げる権利は認めない」という最小限の制約であることが望ましいのです。

具体的に何を教育するといえば、歴史です。ナチスドイツやソビエトの様な全体主義が撒き散らす毒とその末路、彼らの手口を学び、自由主義・民主主義が現代人類の到達点として優れていることを理解することです。
日本人はまともな教育を受けていませんので、全体主義について非常に無理解であり、そのことが、金のために中共と容易に手を組んでしまう連中が多数生まれる原因になってしまいます。実際、中共をここまで育て上げたのは日本というのは、過言ではないでしょう。
2020年11月21日土曜日

目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画(クライブ・ハミルトン著)

目に見えぬ侵略
世論と政策のキーマンをどう操り、反対者を沈黙させるのか?  おそるべき影響力工作の全貌が白日の下にさらされる、禁断の書。 原著は大手出版社Aleen&Unwinと出版契約を結んでいたが刊行中止、その後も2社から断られた。 「(本書の)販売中止を決めた自粛は自己検閲だ」(フィナンシャル・タイムズ)と物議をかもし、 中国共産党の海外工作ネットワークをすべて実名入りで解明した、執念の本格研究、ついに全訳完成! 「世界各国のモデルになるのでは」とされる、ターンブル政権の外国人・企業からの献金禁止の法制化や 「スパイ活動」の定義拡大の動きに本書が先鞭をつけた。 「中国による浸透工作が半ば完了しつつあった時、強烈なウェイクアップコールとなったのが、 ハミルトン教授による本書「サイレント・インベージョン」である。本書はオーストラリアを変え、 アメリカにも大きな影響を与えた。」(監訳者解説より)

 

要約


この本は、チャイナがオーストラリアを”侵略”していく過程を白日に晒し、それによってオーストラリアの行動を変えた本だと思います。

本書の中でチャイナのやり方について、大きなポイントは以下3点だと感じました。
  1. 華僑をチャイナ共産党に従わせる僑務の存在
  2. チャイナマネー
  3. 「自由」「人種」「平等」といった西洋現代思想の徹底的な活用

まずは、僑務について。
私たち日本人を含めた、西洋……、いえ現代社会では、一般的に民族と国家というのは別の概念です。
つまり、日本人だとしても別に全ての日本人が、日本政府なり日本国と一体ではありません。具体的に言うと、日本人として日本国籍を持ち日本に住んでいれば、戦争になれば戦うと思いますが、外国に行って外国に帰化すれば、その外国人として戦うことになります。

しかし、チャイナはこれとは違う論理です。
チャイナ共産党(以下、中共)は、国籍を持つチャイナ人だけではなく、国籍を離脱したチャイナ系を含め、さらにはその子孫までも、中共の協力者として働かせることを企図しています。
そのための任務として、僑務はとても重要な役割を果たしていると指摘します。


2つ目のチャイナマネーは、日本でも比較的知名度が高いと思います。
チャイナマネーが通常の投資と異質なのは、それが全て中共の利益にそった運用をされるという点です。普通の企業は、自国政府の指導や命令に従って外国に投資することはなく、営利の追求を基本とします。だから、チャイナの投資は目的が違う以上、異なる基準が必要だと指摘します。
このような手法で自国企業を統制することは、軍事力で他国に強要するよりも安価かつリスクの低い手段を生み出します。これは「地経学」として知られます。


そして最後の西洋現代思想の徹底的な活用は、正当なチャイナへの批判や外国からの影響の規制を、レッテル張りして封じ込める典型的なやり方です。
例えば、チャイナマネーや移民について否定的な意見が出れば、それを「外国人恐怖症」と批判するといった内容です。

さらには、チャイナ留学生の活動については「寛容な言説」「多文化主義」に訴えかける一方で、ダライ・ラマを呼び大学で講演するとなれば「分離主義者」や「テロリスト」を招いてチャイナ留学生を侮辱すると主張するようなこともあるそうです。


考察


ここでは、この豪州の教訓を参考にし、日本でチャイナ勢力の浸透を食い止め、日本の中枢に影響を与えるチャイナ勢力を排除するために、どのようなことが必要なのかを考えてみたいと思います。
先ほど、上げたチャイナの侵略手法の3ポイントに対応させてみていきます。

  1. チャイナ人の入国、滞在、永住許可、帰化要件の見直し
  2. 地経学の普及、外国人献金の禁止、各種資本規制
  3. 自由を妨げる自由、秩序を妨げる権利は認めないことを明確化する。

本書から学べることは、チャイナ人は、普通の外国人とは違い、国を離れても中共の利益のために行動する存在であることを理解すべきです。もちろん、全てのチャイナ人がそうだとは言いきれないのは承知しています。しかし、そこにつけこむのが彼らのやり方であり、そしてそのような政権?王朝?を許容している以上、外国で区別されてしまうのはチャイナ人の宿命なのです。
そうであれば、普通の外国人と同じように、入国や永住等の許可を出すべきでないことは、当然の帰結であると言えましょう。

しかし、この手の内容を制度とするのは、至難の業だと思います。なぜなら、チャイナのプロパガンダとしてもそうですが、ナイーブな人とも戦わないといけないからです。

プロパガンダとナイーブな人に勝つためには、その焦点が「戦場」であることをはっきりさせ、悪く言えば「不安を大衆に煽る」ことで、世論を変えなければなりません。それを豪州で成し遂げたの本書なのでしょう。

世論ではなく、エリート層向けには、やはり地経学という新しい概念を普及させることが必要だと思います。
日本でも豪州でもそうですが、最初に「墜ちる」傾向があるのは財界です。
ここを落とされないようにするために、地経学が必要だと思います。チャイナマネーを賄賂としてもらって云々ということもありますが、多くの財界人は基本的にはチャイナの市場の大きさを、自身の機会と捉えているから、このようになっているのだと私は考えています。
しかし、チャイナの一見して機会に見えるものは、実際にそうではないかもしれないということを正しく理解するためには、地経学という概念を理解し、中共の手口を学ぶことが必要でしょう。

地経学を普及させ、エリート層に防衛の必要を理解させたとしても、実際にチャイナが札束で殴り掛かってることを止めることはできませんので、当然ながらそのお金の流れは止めなければいけません。
それが外国人献金の禁止(現行の政治資金規正法だけでは足りない!)や資本規制になります。

最後に、私が一番必要だと思うのは、「自由を妨げる自由、秩序を妨げる権利は認めない」ということです。
チャイナ人にだって、当然人権が認められるべきだと考えます。しかし、彼らが中共のコントロール下にあり、そして中共は明白な事実として、全ての人々に平等な自由や権利を保障・尊重する存在でないのです。
だからこそ、本書に出てくるチャイナ人のダブルスタンダード(チャイナ人の自由を主張しながら、ダライ・ラマや大紀元に反対する)のような形で権利を「乱用」するのです。

自由・人権・民主主義といった国際社会のメインストリームは、今までの歴史とは違う形で挑戦を受けています。しかし、人類にとってこのような価値観は、ベストかはともかくとしてベターであるということは、間違いないのではないでしょうか。
そうであれば、価値観を守るために修正された自由や権利に関する思想が出てくるものだと信じています。

個人的には、日本国憲法には、「公共の福祉」という便利な言葉がついていますので、この程度の権利の制限はさほど問題にはならないのではないかと考えています。
最も日本国憲法が権利を保障する対象は「国民」であるので、外国人に対して、それをどの程度保障するものなのかといえば、政治的な判断というのがあって然るべきということであり、つまりは国民世論によって動かすことが比較的容易な部分ではないかということです。



地政学という観点でチャイナを見るのであれば、この本がとても役に立ちます。

中国の「核」が世界を制す(伊藤貫著)


外国人の需要については、過去にもこのようなオピニオンを記載しました。

入管法改正に寄せてー日本における外国人とは
2020年9月6日日曜日

20200905:武17、荻11他

チャイナウイルスで外出も難しい時期が続いていましたが、近場で用事のついでに1日乗車券を使って、軽く乗り&撮りという感じで回ってきました。
一番前の席が封鎖されているので、車内からの写真が少ないですが、あらかじめご容赦願います。

武蔵小金井駅北口


北口で見かけられるバスをいくつかご紹介。


西武バス 武15系統 滝山営業所



西武バス 武20系統 学園東町経由小平駅




西武バス 武21系統 錦城高校経由東久留米駅




京王バス 武31系統 中大循環(午後)



京王バス 武44系統 小平団地



関東バス 鷹33系統 三鷹駅


西武バス 武17系統 武蔵小金井駅~昭和病院~小平駅




武20系統を中心とした武蔵小金井駅と小平駅を結ぶバスの中に、突如やってくるのが行先ではなく、経由地をデカデカとアピールする武17系統。

このバスは、色々特殊なルートを辿る「レア」なバスなので、誤乗を防ぐ必要があります。
まず、武蔵小金井駅を出ると、小金井橋までは小平駅の他、滝山営業所・東久留米駅・清瀬駅行と同じように小金井街道を北上します。
小金井橋では小平駅方面の各バスのみ、左折し五日市街道へ行きます。

五日市街道は玉川上水沿いにあり、緑が豊富なので歩くのに良さそう……かもしれませんが、まだまだ歩くどころではない天気が続いています。
御幸町のところで右折し、日立国際電気のバス停があります。通勤時間帯に数本ここで折り返す便があるようです。
日立国際電気を過ぎると、新小金井街道を渡り、喜平図書館のところを右折すると、小平団地中央のバス停。
この先でY字路になっており、分かれ道となります。


画像奥に武20系統のバスが見えていますが、このY字路を左折していくと、真っ直ぐ青梅街道の方へ行き、小平駅を目指すのであればこちらが最短です。
実際、武20系統(と入出庫の武19系統)は左折します。

しかし、この武17系統は右折し、鈴木街道の方へ行きます。
ここからは西武バスとしては、1日数本のレア区間ということになります。
「西武バスとしては」というのは、この区間には立川バスの寺51系統を中心とする花小金井駅~国分寺駅の路線が1時間に3本程度走っているからです。


右折した先に、少しだけですが左右を寺と神社に挟まれた区間があり、ここは雰囲気があってよいです。ただ、交通量が多いので歩いても気分はあまりよくないでしょう。

鈴木街道を直進し、新小金井街道を渡り、小金井街道を左折します。ここまで大回りしてきましたが、滝山営業所方面等のバスであれば、あっという間の距離しか進んでいません。
さらに花小金井駅は、武蔵小金井駅発の系統は殆どが、小金井街道上の花小金井駅入口というバス停にしか止まりません。

しかし、この武17は花小金井駅南口のロータリーへ入ります。
花小金井駅南口の2番バス停は、「西武」新宿線の駅であるためか、南口から雨でも濡れずにいける至近距離にありますが、やってくるバスはこの武17系統とこの便の区間便に該当する花12系統のみであるため、勿体ないように思います。
そんな感じなのでマイカーの乗降に多用されているようであり、このバスは不心得者にクラクションを鳴らしていました。

実は、単独区間からもちょこちょこ乗っていたのですが、ここで全員が降り、結論から言うと以降誰も乗ってきませんでした。
やってきた道を元に戻り、小金井街道へ戻ってから右折して北上し、花小金井駅入口バス停を過ぎると、花小金井交差点で青梅街道へ左折します。

この青梅街道の区間も武20系統と合流する熊野宮交差点までが、西武バスとしては、1日数本のレア区間ということになります。
実際は、先ほどの立川バスのうち、花小金井駅を超える寺51昭和病院行と寺56大沼団地行があり、都営バスの最長系統梅70系も通るため、昭和病院を境に本数が減るとはいえ、それなりには走っています。

昭和病院はこの地域の大きい病院であり、バス的に言うと立川バスの折り返し、休憩スペースが用意されています。
西武バスは、道路上の停留所を通過し、西武新宿線の踏切を超えます。その先で三度目の新小金井街道を渡り、天神町の交差点で武20系統が合流してきます。
その先、仲町の交差点を右折すると、特徴的な建物のルネ小平があり、小平駅南口のロータリーにつきます。

折り返しも同じように経由地アピールでした。



荻窪駅


電車とバスで移動し、荻窪駅までやってきました。
北口から出るいくつかのバスをご紹介します。


関東バス 荻06系統 中村橋駅




関東バス 荻07系統 練馬駅




関東バス 荻10系統 下井草駅




関東バス 荻12系統 井荻駅



関東バス 荻31系統 プロムナード荻窪



関東バス 荻32系統 武蔵関駅



関東バス 荻34系統 北裏




関東バス 荻36系統 南善福寺




関東バス 荻40系統 立教女学院



西武バス 荻14系統 上井草駅経由石神井公園駅




西武バス 荻17系統 練馬高野台駅



西武バス 荻18系統 上井草保健センター循環





西武バス 荻11系統 荻窪駅~井荻駅入口~石神井公園駅南口




あれこれ撮って時間を潰した後、荻11系統に乗りました。
1時間に1本程度なので、荻窪駅を発着するバスとしてはレアに当たりますが、一般的に言えば少ないとは言わないでしょう。

荻11と荻14はどちらも石神井公園駅に向かいますが、ルートが全く違います。
本数が多く利用者が多い荻14は、荻15や荻18と同様に総合荻窪病院や上井草駅を経由して、石神井公園駅を目指します。
このルートは地図で見ればわかる通り、遠回りであり、青梅街道から一本入って上井草駅までが狭隘であることや西武新宿線の踏切に関わるため、石神井公園駅まで行くことを考えると時間がかかります。

荻11は、環八通りを北上して石神井公園駅へ向かうため、直線的なルートです。
環八通りを北上していった場合、近い西武池袋線の駅は練馬高野台駅であり、こちらへ行くのは荻17となります。

荻窪駅を出ると、四面道を右折し、環八通りに入ります。
道が大きいため速度はそれなりに出ますが、利用者は少ないようで通過していきます。
本数が多い並行系統の荻12、荻12-1は別の乗り場から出ているため、この区間の利用者はそちらを利用していると考えられ、この系統に乗る人は遠距離と棲み分けられているでしょうか。

井荻駅入口まで乗降なく、陸橋で西武新宿線を超えていきます。
防音壁があるため展望はありませんが、ここまではスムーズでした。
この先からポツポツ降りる人が出てきますが、それに加え環八の渋滞もあり少し時間がかかります。

八成橋を過ぎると、旧早稲田通りに左折します。ここがこの路線のハイライトとも言えますが、旧早稲田通りの狭隘区間なら阿50系統であり、その阿50系統が前にいて客を根こそぎ奪っていったため、このバスには誰も乗ってきませんでした……。


当然この旧早稲田通りには大型バスは通らないわけですが、中型バスであっても離合には気を遣うわけで、この道にバスを頻繁に運行させているのには、色々苦労があると思います。
今回は、幸い?残念ながら?バス通りの離合はありませんでした。とはいえ、一般車相手でも楽ということはありません。
また、カーブで見通しも悪い部分が多いので、バスが気を付けていても、不心得者が飛び出してこないかということもあるでしょう。

この狭隘区間を抜けて、豊島橋交差点で、旧早稲田通りは左折しますが、バスは右折します。荻14系統とはここで合流し、荻14は左の方からやってきます。

石神井公園を左手に見て、進んでいくと最後の関門として石神井公園駅近くの商店街を抜けていきます。
ここも狭隘かつ歩行者・自転車も多いため、右折箇所には警備員が配置されていたりします。



おまけ


所用のため石神井公園駅から大泉学園駅へバスで移動していたのですが、富士街道バス停で乗り換える時に新デザインのバスに出会いました。
しかも、本数の少ない泉35-2系統。


座席にも柄が入っています。



後ろから。


個人的には、見慣れない部分が大きいですが、良いデザインではないかと思います。
しかし、旧型車ばりにうるさいエルガ……
2020年8月2日日曜日

直接的要因と間接的要因

はじめに


最近はオニール本やミネルヴィニ本でグロース(というかモメンタムかも)投資を学んでいました。
どちらの本もグロース投資なので、つまりは「これから株価が上がる株」を買うということになります。

では、「これから株価が上がる株」は何かということを考えるわけですが、そこで重要な株価を動かす要因が何かというと、直接的には需要と供給ということになります。
オニール本もミネルヴィニ本も、最終的にはチャートから需給を読み切って、ベストのタイミングで買うことを指示しています。

ちなみに、それぞれの読書メモは書かないの?という話ですが、あらすじはもう別にいいと思うので、これで代用します。

直接的要因とは


株価が動く直接的要因は、需要と供給と言いました。
つまり、これはセリみたいなものです。

株式市場は、買いたい人と売りたい人がいます。
たとえば、私がアップル株を持っていたとして、100万ドルだ!と言っても、買う人が100万ドル出してくれなければ、100万ドルで売れることはありません。
逆に、Amazon株が欲しいとして、10ドルだと言っても、売る人が10ドルで売ってくれなければ、10ドルでは買えません。

市場参加者の中で、それぞれの株が欲しい人が買いたい価格を提示し、売りたい人も同様に売りたい価格を提示する。それがマッチしたところが、今の株価というわけです。


間接的要因とは


これは一杯ありすぎるので、独断で主なものだけをピックアップします。
  • 理論株価
  • PER(PSR)
  • 決算
  • 金融政策
  • 世界の景気
  • 格付け、レーティング、その他の推奨
  • トレンドライン・チャネルライン
  • 移動平均線
  • フィボナッチ
  • オシレーター
前半の5つ、6つがいわゆるファンダメンタル分析に関わる部分になります。

(私もそうでしたが)決算が良いとか割安といった株を買おうと思う人がいます。
そういう人が一杯いれば、株価は上がります。
しかし、これは直接的要因ではありません。なぜならば、
 PERが安い→買いたい人が増える(需要が増加する)→株価が上がる
だからです。

バリュー投資を実践している人なら理解できると思いますが、PERが安かろうと、買いたい人が増えない(その低PERが正当な評価だと思われている)のであれば、需要は増加しませんので、株価は上がらないからです。

後半の4つがテクニカル指標と呼ばれるもので、トレンド(上がる・下がる流れ)を測ったり、株価が反発するラインを読み解くものです。
たとえば、下がっていた株が、移動平均線やフィボナッチが示す価格帯で反発したとします。
これもまた直接的要因ではありません。
 価格帯に達する→機会を捉えて参入する(需要が増加する)→株価が上がる
だからです。

逆に言うとテクニカル指標の最大の失敗例は、捻ったシグナルを発見してみたものの、誰もの地点を「価格帯に達した」と判断して、参入してくれないというオチです。つまり、テクニカル指標には王道しかあり得えないということは、理解しておいて損はないと思います。

投資の中でどう考えるか


今までの話の流れからすると、直接的要因であるところの需給さえ見ていれば儲かるということが言いたいのではないかと思うかもしれませんが、これは違います。

需給を読み解くには価格と出来高が必要ですが、これは事後的な情報になります。
そして、ある時需要が増加し、価格が上がった株が、その後に上がるのか下がるのかは結局わかりません
どこかで、需要が一巡してしまえば、売り優勢になって価格は下がるわけです。

となるとアプローチは三つになります。
  • 需要が上がり「そう」な株を事前に買っておき、上がったら売る。
  • 大きく需要が上がる株を、需要が上がった前半の段階で見いだし、上がったら売る。
  • 株価のことは忘れて只管積み立てる。
1つ目が逆張り、2つ目が順張り、3つ目はインデックスか高配当のことですかね…。

3つ目のことは忘れておくとして、1つ目の逆張りをするのであれば、間接的要因に頼って、割安であるか下げ止まりそうな株を狙うことになります。
2つ目の順張りをするとしても、上がったものから更に上がる"玉"と、すぐ元に戻る"石"を見分けるためには、間接的要因も考慮する必要があります。

しかし、過去の自分の反省ですが、割安株を探すや良決算を調査することに没頭し、間接的要因に意識が向きすぎるあまり、人がそれをどう見て、買ってくれるのかということを忘れていたということがあります。

特に決算シーズンは決算が良い悪いという情報が錯綜します。
良い決算なのに、下がっている…なんて声も聞こえたりしますが、個人的にはこう考えるようにしました。「良い決算かどうかは、お前が決めるのか?
決算の結果で、皆がその株を買おうとしないのならば、きっとその決算は良くないと考える人の方が大勢だということになります。

少なくとも私は良い決算かどうかを判断する力がマーケットに勝っているとは全く思いません。そういう意味では、「効率的市場仮説」を部分的に是認しているかもしれません、笑
なので、決算情報はウォッチしますが、その判断は、自分でも下しませんし、他人の見方も無視し、株価だけを見るようにしました。

ただし、株価の上昇にファンダメンタルが裏付けとしてあるのかというところは、見ておいても損はないと思います。
デッドキャットバウンス(最近聞かなくなりましたね)ということもあり、上がっているし、出来高も増えているけど、実体がないこともあります。ロビンフッドのようなイナゴが群がった銘柄はそうでしょう。


もう一つは、確率の問題として(なのに体感だけど)、上がっている株が上がり続けることと割安株が逆襲して上がっていくことでは、少なくとも米国株においては前者の方が多く機会が存在するように感じました。
ETF投資における「バリュー」と「グロース」の方どちらが良いという話とは異なり、投資手法としてみた時は、グロース順張り(モメンタム)投資の方が有力な(上がる確率が高い)手法のように感じました。
体感なので、個人の能力・志向の上では、という話になります。

まぁ、ぶっちゃけてしまうと、バフェット本とオニール本やミネルヴィニ本では実践の難易度が違い過ぎるという部分もあります、笑
そのような個人的な問題も含めて、グロース順張り(モメンタム)投資が有力かなという結論に最近達しました。
(3月に達していたらなぁ……)


参考文献


オニールの成長株発掘法
アメリカ屈指の投資家であるウィリアム・J・オニールがやさしく解説した大化け銘柄発掘法。第4版の本書では、大化け銘柄の発掘法とともに、2000年と2008年のような大暴落から身を守る方法も明らかにされている。また、1880~2009年に大化けした銘柄の詳しい解説付きのチャートを100枚掲載し、初心者にもひと目で分かるような工夫が施されている。
ミネルヴィニの成長株投資法
急成長株を上昇前に知り、仕掛ける方法を伝授!ミネルヴィニのトレード法の驚くべき効果を証明する160以上のチャートや数多くのケーススタディと共に、世界で最も高パフォーマンスを達成した株式投資システムが初めて明らかになる。
2020年5月24日日曜日

隷属なき道(ルドガー・ブレグマン著)

隷属なき道
オランダの29歳の新星ブレグマンが、「デ・コレスポンデント」という広告を一切とらない先鋭的なウェブメディアで描いた新しい時代への処方箋は、大きな共感を呼び、全世界に広がりつつある。最大の問題は、人間がAIとロボットとの競争に負けつつあること。その結果「中流」は崩壊し、貧富の差は有史上、もっとも広がる。それに対する処方箋は、人々にただでお金を配ること、週の労働時間を15時間にすること、そして国境線を開放することである。それこそが、機械への『隷属なき道』となる。


はじめに


ベーシックインカムは私も何度も取り上げているテーマですが、それについてオランダの若手ジャーナリストが新しい目線を提供している本です。
「働かざる者食うべからず」からの古い思想から脱却できない日本人に、この新しい目線を考えてみることは重要のように感じます。


あらすじ



筆者は、現代の真の危機について、「より良い暮らしを思い描けなくなっていること」にあるとします。
中世の時代からすれば現代はユートピアそのものであるが、新たな夢を描けないため、富裕国の人の大半は、子供たちは親世代より悪い時代を生きることになると信じているそうです。
そして、資本主義は豊穣の地の門を開いたが、資本主義では豊穣の地を維持できず、別の方法を見つける必要があるとします。


その方法として筆者はベーシックインカムを主張します。
現代の福祉は「働かざる者食うべからず」の発想からなりたっており(聖書にもこの教えはあるそうです)、貧乏人はお金を上手く使えないといおう前提のもとで、就労重視の様々なプログラムが行われています。

しかし、この前提は間違っており、フリーマネーを手にした人は、そのお金を適切に使い、収入を増加させていたり、学業成績を向上させる、人々が健康になるといった良い効果が実際に確認されています。
一般的な固定観念である、フリーマネーをもらうと堕落するというものは誤っていたのです。

しかし、このような「ユートピア的」な画期的なことは、3つの根拠による攻撃を受けるようです。無益だ・危険だ・計画どおりにいかないと。しかし、ユートピアは実現するとたちまちどこでも当たり前のものと見なされるようになるとします。かつての民主主義のように。

そして、ベーシックインカムの有効性について、筆者は貧困がもたらす欠乏の害を考えるべきだと主張します。
さらに、貧困は「相対的貧困」がすべてであり、国がいくら裕福になろうと、不平等はつきものです。格差社会で生きる人は他人にどうみられるかをより気に掛けるため、結果として生じるストレスは、病気や慢性的な健康問題につながりやすい。
このことについて筆者は「病気を治そうとせず、症状を抑えることばかり考えている」と評します。
それでも良心が痛まないなら、財布にとっても良いことを考えることを勧めます。

その他、GDPの意味合い、労働時間の削減、国境を開く意味についても本書では触れられていきます。


考察


ベーシックインカムを考えるにあたり元々私は、「財布」のことしか考えていませんでした。複雑になった福祉制度を維持し、面倒な手続きとそれを行う公務員を雇用し…という、労働のための労働を排し、純粋にお金を振り込む方がコストが安いということです。

この本から得られた視点は、ベーシックインカムによるフリーマネーは貧者を堕落させるのではなく、資源があることでその資源を活用して、幸福の最大化を目指すということでした。これは私も想像に至っていないことで、貧富の格差が広がった結果、貧しい側は何もできなくなっており、却って無気力になっているということです。

もう一つは、既存の概念だとフリーマネーをもらって(金銭的な)生産性のない活動をするというのは悪(怠惰)ということでありますが、それは一面的なものの見方であり、GDPのような旧来の概念に捕らわれてはいけないと感じました。

本当の豊かさとは何か、より良い暮らしとは何かということを考えていけば、ベーシックインカムを採用し、AIを働かせて裕福な生活を維持し、人間はよりよい人生を考えていく、そのような時代が来ているように感じます。



私のベーシックインカムに関する考えは、以下の記事をご覧ください。

日本復活へ一市民の妄言2019 その2
2020年5月17日日曜日

中国の「核」が世界を制す(伊藤貫著)

中国の「核」が世界を制す
そのとき、アメリカは「中国の軍事的脅威」から日本を守らない。日、米、中の政治指導者、知識人が日本国民に読ませたくない「禁断の書」。

はじめに


最近米中関係が取りざたされる場面が増えてきました。
今後の展開を考える上で必要と思ったので、かつて国際政治、国際関係、安全保障を学んでいたころの本を読み返していました。
少し古い本(2006年)ではありますが、この本が指摘していたことが、現実のものになっていることやこの考え方を理解しておくことは肝要ということでメモを残しておきます。


あらすじ


筆者はまず国際関係を理解するために、以下のパラダイムを理解すべきとします。
(この辺は改めて説明してみたいと予定しています)
  • リアリスト・パラダイム
  • ウィルソニアン・パラダイム
日本人に理解しやすいのは「ウィルソニアン」の方で、いわゆる「国際法・国際組織、経済の依存性などを重視し、それによって戦争しなくなる」という、いわゆるリベラル的な考え方です。

一方、リアリストは「現実主義」であり、「強制執行能力のある世界政府や世界警察がない時点で、国際法や国際組織に依存するのは現実的ではないとし、バランスオブパワー(軍事力の均衡)を重視する」という考え方です。

筆者はリアリストの考え方に沿っており、アメリカやチャイナの指導者もリアリストの考え方で動いているとし、米中関係の実態を紹介し、日本がどのような防衛をすべきかということを紹介します。


その上でチャイナの戦略を要約すると、
  • 2020年頃まではアメリカとの本格的衝突は避け、現状の有利な国際経済システムを維持する。
  • アメリカに対して、覇権争いをしないという情報戦を行い、アメリカがチャイナ封じ込めを始める時期を遅らせる。
  • 日本に自主防衛能力を持たせない。
  • ロシア・EU・南朝鮮・東南アジアを味方につける。
であると解説しています。
まさに現実のものになりました
では、その目的は何かといえば、「アメリカをアジアから駆逐する」です。
それはつまり、漢民族が19世紀初頭に支配していた中華勢力圏を回復することになります。

これについて興味深いエピソードを1つ。アメリカが入手した、チャイナ政府の内部文書には、「2020~2030年頃に米中関係はもっとも危険な状態になる」と分析されていたそうです。
このあたりで、経済力が均等に達するが、軍事力が総合的上回るのは2030年頃であり、その間にアメリカはチャイナを潰すために厳しい対抗策を実施すると予測していたそうです。

そして、この「台頭」には、歴史上の類似点があります。それは、19世紀ドイツ、ビスマルクの「平和的台頭」という帝国強大化政策です。
上記で要約したチャイナの戦略のうち、上2つはドイツ帝国のものと酷似しています。
その歴史において何が起きたかといえば、欧州のバランスオブパワーが崩壊した結果としての第一次世界大戦です


もう一つ日本人が考えておくべきだと私が思う点に、チャイナの軍人や学者が挙げる、チャイナが核開発をした理由があります。
  • 米ソは核武装した覇権主義国家であり、チャイナはこの2国を牽制するために自主的な核抑止力は不可欠である。
  • ソ連はチャイナの核開発に反対し、ソ連の核の傘にチャイナも依存しろという。しかし、アメリカがチャイナを核攻撃したとして、それに報復するためにソ連がアメリカ核を打ち込むことは(自国へのリスクを考えれば)ありえず、核の傘は機能しないものである
  • 貧しく予算の限られたチャイナが、その範囲で米ソに対抗するためには、通常兵器より核兵器の方が、はるかに高い投資効果を得られる
  • 国際社会で真の発言権があるのは核武装国だけである。核兵器を持たない国は、核武装国に恫喝されれば、屈服するほか無い(報復できない)
そして、この核の存在がチャイナのアメリカに対する交渉力を引き上げており、それは日本に対しても同じです。彼らの傲慢、高圧的、一方的な態度の背景には、核戦力があると指摘します。

筆者は、小型の核弾頭とそれを潜水艦から発射する術を持つことが必要だとしています。その核抑止が必要なことをアメリカに説明するロジックが以下です。
  • 核の傘では、近隣の核保有国であるチャイナ・露国・朝鮮からのニュークリア・ブラックメール(核を打ち込むという脅し)に対し、頼りにならない。これらに脅かされる日本が自主的な核抑止力を持つのは、独立国としての義務である。
  • 日本人の国防よりも、日本が核を持たない方がいいというアメリカの覇権利益を優先させるのは、道徳的に正しくない。
  • 日本が核を持つとNPTは壊れるというが、NPTの本来の目的を核武装国は守っていない。東アジアでNPTを守っているのは日本だけであるが、そのようなお説教をされるのは欺瞞に満ちている。
  • アメリカは集団的自衛権を行使し、米軍と歩調を合わせることを要求する一方で、日本に自主的な防衛力、核抑止力を持たせようとしない。これは利己的かつ狡猾であり、このようなやり方は反米感情を高めるだけであり、アメリカにとってマイナスである。
  • 既に抗戦能力を失っている日本に2度の核攻撃を行い、大量虐殺という戦争犯罪を行ったアメリカが、その犠牲になった日本に対し、チャイナ・露国・朝鮮が核武装しても日本だけには核抑止力を持たせないと説教するのは、グロテスクではないか?
筆者は、このようにパブリックな場で核武装を論じることや青年たちに、国際関係・外交・国防の知識を持たせるための「徴学制」を提案します。


考察


私はこの分野の本を読み、大学で講義を聞いた程度の知識しかないです。
しかし、その私でも常日頃思うのは、如何に日本人の大多数が、この分野について「無知」であるかということです。

本書は、ほぼリアリズムの視点から書かれている本です。それは、アメリカとチャイナという国に焦点を当てている面があるからであり、ウィルソニアン(リベラリズム)が間違っているということではないと思います。

しかし、大国間の外交、非民主主義の政体が違う国との外交、文化的共通性のない国との外交には、明らかにリアリズムの方が実態を捉えているように考えます。


ところで、日本人は、異常なほどの反戦・反核教育を受けており、国際社会・軍事における核というものの意味を全く考えていません。考えているごく一部の人や官僚・政治家は、極端にウィルソニアンに偏った考えをしています。
しかし、それは非常に危険なことだと思います。
何故かと言えば、それは国際社会の潮流を理解していないということであり、大東亜戦争に発展する過程で、国際社会の潮流を無視した行動を取り続けた結果、勝ち目のない戦争で破滅したことと全く同じだからです。


ただ1つだけ、私が本書に賛成しかねる部分があります。核武装をオープンに議論することです。そのようなことをしてしまえば、妨害を蒙ることは間違いないです。
オープンに議論をして国会で議決などしてしまった暁には、もれなく「核開発を辞めろ。さもなくば、東京に核を打ちこむ。」とチャイナに恫喝されて終わりです。

核開発は徹底して秘密主義で行い、最後の最後でそれが現実のものであることを証明するための実験をするというやり方でなくてはいけません
核抑止力を持ち、核を打ったら反撃されるとわかる段階までくれば、他国は干渉できません。これは、インドやパキスタンの例をみればわかるでしょう。

そのためには、機密を守る体制や使途を公開しない多額の資金を必要とします。現在の日本で、それができる体制も政治的意思を持った人間もいないので、残念ながら核開発は現時点では、非現実的と言えます。

だから、日本がすべきことは、まず国防の考え方を、選挙を通じて政治家に反映し、軍隊と情報機関をきちっと整備することです。これが核開発に入れる最低条件かと思います。

ちなみに、ニュークリア・シェアリングという概念があります。NATOにおけるもので、独伊などに米国所有の核が配置されているようです。
これと近しいことを日本ができるかというと、アメリカ側の判断が難しいですが、今後チャイナが強硬になったとき、かつ民主党政権が誕生しなかったとき、このような議論が沸く可能性はなくはないです。
ただし、現状日本の国防に対する考えはこの程度なので、まともに取り合われないのがオチでしょう。

もし、ニュークリア・シェアリングが成しえたとして、自主核抑止の代わりになるのかといえば、これはやってみないとわからないというのが、正直なところです。
核抑止というのは理論の世界ですが、実際にはニュークリア・ブラックメールをぶつけ合わないと実証実験ができないためです。
しかし、アメリカが所有する核を日本の判断で、好き勝手に発射できるものではないとなるはずだと予測されます。
その場合にはチャイナがメッセージを正しく受け取らず(ある意味ニュークリア・シェアリングの欺瞞を喝破しているとも言えるが)、抑止に失敗するという可能性も考慮すべきでしょう。

確実なのは、自国の意思のみで確実に発射できる核武装であり、かつ潜水艦等の自国の領土が壊滅しても、核報復する能力を維持できる態勢でしょう。
日本にとっては、チャイナ・ロシア・朝鮮くらいがターゲットで、欧米を対象とする理由はありませんので、地球の裏側まで届く必要はないですが、それにしたって現状の兵器体系では不可能でしょうから、自主核抑止力を持つというのは、簡単にできることではありません。

2006年当時でも間に合ったか不明ですが、今から議論ではあまりにも遅きに失しています。だからといって議論に背を向けてはならないでしょう。
2020年5月6日水曜日

ビジネスモデル・ナビゲーター(オリヴァー・ガスマン他著)

ビジネスモデル・ナビゲーター
勝ちパターンは55。成功の秘訣はビジネスモデル革新。独ボッシュも採用する欧州発のイノベーション手法。


はじめに


こちらもTwitterで紹介されている本で興味をもったので買ってみました。
新たなビジネスモデルイノベーションをどうやって起こすかという話があり、その中で既存のビジネスモデル55種(多い!)を紹介しています。

今回は投資に役立つ本としての読書しておりますので、Part1部分のビジネスモデルイノベーションの重要性や方法論については読み飛ばしております。

私が読んで気になったビジネスモデルをご紹介し、考察を加えていこうと思います。

あらすじ


デジタル化


既存の製品やサービスのデータをデジタル製品として取り扱い、無駄の削減等のメリットを実現します。


顧客データ活用


ビジネスモデルのコンセプトは「データは新たな原油だ」

データはただそこにあるだけでは、原油と同じで役に立たないですが、収集した顧客データを利用し、データ分析を行うことで、意思決定の強力なツールになります。
これらのデータ活用には、プライバシーの問題など批判を浴びるケースもあります。


ロックイン


顧客があるベンダーやそのサプライヤーに依存しなければいけない(切り替えコストが高い)状態をいいます。
その方法は、契約で約束させる方法、専用品の購入が必要な製品から長い付き合いの営業担当を変えにくいといったものまで様々です。


サブスクリプション


顧客が製品やサービスを一定期間の間使用するもので、月などの期間単位支払うものです。企業からは安定した収入が期待でき、顧客はつど購入するよりは手間はなく、所有リスクを回避できます。


考察


これらのビジネスモデルはもちろん単一でも優れたものですが、本書が55ものビジネスモデルを紹介している(似たようなものも結構ありますが……)、既存の組み合わせの中からでもビジネスモデルイノベーションを生み出せるということにあると言います。

投資家としては、投資先の会社のビジネスモデルが何に該当するかを考えてみることにより、将来この会社が成長するのかということを考える手がかりに成り得るのではないかとともに、リスクを考えるときにも役に立ちます。


デジタル化


現代において、ライバルを含めて全くデジタル化されていない分野というのは、ほぼないでしょう。では、もう過去のビジネスモデルなのか?というとそう言い切るのは早計に感じます。
なぜなら、多くのビジネスモデルの土台になっており、またより最新のデジタル技術を用いることで効率化できる場面というはまだまだあると考えられます。

技術革新によって、既にデジタル化されているビジネスモデルさえも変わることは考えられます。
例えば、映画のレンタルにしても、最初はレンタルビデオ店でした。途中からネットで借りてポストで返却のようなやり方になり、現在ではネットフリックスのように、ネット上で映画が見れることになっていきました。
初期段階では多くの店舗に大量の在庫が必要でしたが、受付をネットのみとすれば店舗は減らせます。最終的にネット配信となれば、店舗も在庫もいらなくなります(サーバーが必要になりますけどね)。


顧客データ活用


このビジネスモデルでは、
  • その会社が適法にデータを収集しているのか?
  • 収集したデータの活用は顧客から見て納得がいくものか?
  • 収集したデータを活用して、さらにビジネスを展開できないのか?
などは考えてみたいことです。
いくらデータが、新時代の原油のように活用することで新しい価値を続々と生み出せるとしても、そのデータ活用が違法やグレーであっては理解が得られないでしょう。
どうしてもプライバシーはセンシティブな問題になります。
そして、単に自社が稼ぐだけではなく、顧客にとってデータ活用が有意義でなければいけません。それでなければ、顧客からデータの提供を止められる可能性があります。
内容にもよりますが、個人情報の場合はオプトアウトといったこともあります。
理解が得られないでは済まずに、訴訟リスクを抱えることになっているかもしれません。


ロックイン


このビジネスモデルは、一度ロックインに成功すれば安定的なキャッシュフローを得ることができます。
  • どの程度ロックインされたビジネスからキャッシュを得ているか?
  • ロックインの強さ(依存度)はどうか?
  • そのロックインされたモデルを覆される可能性はないか?
などが考えられるでしょうか。
ロックインされたビジネスが如何に強力でも、あまりキャッシュになっていなければ意味がありません(何でもそうですが)。
ロックインといっても幅広く、営業力が高いというのだと私は弱いと思います。競争力を持つ営業マンを維持・育成しなければなりませんので、人的コストが高いです。

本書で例示されるコーヒーマシンのような専用品の購入が必要な製品の場合は、より強力なロックインとはなります。
しかし、そもそもそのモデル自体がひっくり返されるような競合が現れれば、ロックインが如何に強力であっても続かないこともあるでしょう。


サブスクリプション


このモデルも猫も杓子もという感じで、いささか過熱気味の様相を呈しています。
都度購入とかしなくてよいのは便利ですし、多く使えば顧客からするとお得です。
ビジネスモデルとしては
  • 本当に継続してもらえるものなのか?
  • 投資したキャッシュを回収する算段が立っているのか?
  • サブスクリプションが適切なのか?
などが考えられるでしょうか。

最初は顧客からしても気軽に始められます。ということは逆も然り。固定費としてのしかかるその負担を見た後、顧客がさっと解約できるわけです。
つまり、サブスクリプションとして提供しているビジネスが、きちんと継続されていなければいけません。
また、この手の企業の特徴として、先行投資がとにかく多いです(典型はネットフリックス)。それを長期間、安定したキャッシュフローで回収していく想定になっています。
それが実現可能かという点は厳しくチェックすべきでしょう。

そして、最後に、本当にそのビジネスはサブスクリプションが適切なのかということも考えておきたいです。最近はとにかく流行りものに乗っているケースが多いので、本質的には意味がなかったり、既存ビジネスの価値を毀損しかねないサブスクリプションもあると思います。
2020年5月2日土曜日

チャイナウイルスの救済について思うこと

はじめに



本項では、所謂新型コロナウイルス(COVID-19)をチャイナウイルスと呼称します。
これは発生国を明示的にするためのものであり、チャイナによる情報戦に対しての意思表示となります。それ以上の意図はありません。

このチャイナウイルスでは様々な被害が出ています。それらに対して、どのような救済がされるべきかを考えてみます。

※途中まで書いて寝かしていた駄文に追記しています。本当はもっとあれこれ書くつもりだったような……?


救済されるべきものは何か


まず、疫病の蔓延というものは基本的に誰かの責に帰するものではありません。
(チャイナやWHOについては責任を負うべきだと、個人的には思いますが)

ということは、誰かが誰かに対して補償といったものは発生するものではありません。
最近、巷で言われるような自粛要請をするなら補償しろといった類の意見は的外れです。
自粛は疫病が流行っているからであって、政府の責に負うことではないからです。
別の言い方をすれば、政府は自粛要請というトリガーを引いていますが、無かったとしても何れ疫病がより広がれば、客が来ない、労働者が来れない等の事情により営業はできなくなるわけです。

では、チャイナウイルスの被害者は救済されるべきではないのかというと、それでは社会が不安定になってしまいますから、被害を受けた「個人」については補償をすべきです。
アメリカ等でもそうですが、一時的に失業をしてしまった個人を対象に現金給付などをするのは、個人の当座に対して資金を提供することで、公共料金や食料等の必要な支払や借金の返済などを滞らせない、つまり社会の血流であるお金の流れを止めないことと最低限の生活を保障することで、チャイナウイルスの脅威が消えて、社会が正常化したタイミングで早く復旧できるようにする狙いがあるのです。

一方、救済されるべきではないものがあります。
その筆頭が企業を含めた「事業」です。
事業は平常時に利益を得ており、避けられないリスクをヘッジするだけの資金力を得ています。経営者にはリスクに備えるべき義務があります。
もちろん、コロナを予測することは不可能ですが、一定の備えとしてキャッシュを確保しておくことは不可能ではありません。

もう一つの理由として、個人は非常時に救済しなければ、生死に直結したり、社会の安定性に関わります。しかし、事業は本当に必要なものであれば、一時の異常事態を過ぎたところで再開し、再び利益を上げることができます。
逆に言うと、チャイナウイルスショックで倒産するような企業は、そもそも利益率が低すぎて社会に価値を生み出していないか、経営者が怠慢であったと言えます。

また、「救済」する対象を無制限にすれば、「事業をしている」と称する輩による窃取や本来は自力で生き残れるはずの大企業がそれを手にすることになり、「救済」のつけを一般市民が(増税など)で被るという本末転倒な事態になります。
では、制限すればよいのかというと、今度は政府が対象を選別することは、常に公平性の疑問がつきまとい、またその能力も持っていないと思います。

資本主義だからこそ、市場の力で成すべきことだと思います。
本当に社会的に必要なものであれば、ある事業が倒産したとしても、ニーズを満たするために誰かが参入してくるのです。そうやって危機に備えず、必要な手を打てない事業者が淘汰される過程で経済はより強化されていきます

別の見方として、内部留保をため込み、研究開発を怠った企業だけが生き残るから、優良企業は救済せよという意見も見ました。
これにも私は明確に反対します。
金融市場が生きている以上、社会的な意義がある会社は社債を発行して資金を調達することは可能です。あるいは、金融機関からも借りることができるでしょう。
すでに、金融緩和をやり切っている今の段階で市場から資金調達ができない、もしくは不利な条件でしか調達できないとしたら、それは市場から淘汰されるべきだと見做されていることの証左と言えましょう。

また、法人税も利益が上がらなければ、課税の対象にはなりませんので問題にならないということになります。それでもやるとしたら、固定資産税を減免か支払い猶予程度に止めるのがよいでしょう。

救済の方法は何が良いか


色々な方法が出ています。消費税減税、現金給付、商品券、和牛券……。
しかし、現実的に国が個々人が何を抱えているかということを把握できるとは考えにくいです。緊急時で急がれる時こそ、スピーディに、確実に、公平に救済すべきです。

そう考えると、消費税減税はあまり効果がありません。なぜなら、消費する額に応じて、効果が高まるので、富裕層というか消費する余裕のある層に有利なやり方になります。
経済対策としてはやるべきです。あくまでも救済策としての話です)

現金給付は、一番確実な方法です。どんな用途にも使えます。そして、コストも余計なことをしなければ一番かかりません。
しかし、残念ながら余計なことをし過ぎるので、たぶん時間もかかりコストもかかります。
その筆頭が「所得制限」です。金持ちに配るのはけしからんという、ちっぽけなルサンチマンのために、本来救済されるべき弱者が救済されなくなるという典型です。
当たり前ですが、対象者を選定することそのものがコストです。そのことを理解すべきです。
もちろん、事前にマイナンバーに全ての情報を紐づけていれば、数分で昨年の所得がいくら未満とかいうピックアップは可能でしょう。でも、その人が本当に今困っているかは、昨年の所得ではわからないわけで、色々訴えてくる人が出てきたりするとややこしい話になります。
一律のお金をばっと配ってしまうのであれば、マイナンバーに紐づく銀行口座に振り込むだけなので簡単な話であります。(ベーシックインカムについて同じことを主張しています

商品券なり和牛券はもうお話にならないでしょう。

(5/2 追記)

結果として、10万円を申請した人に配ることになりました。
指摘した通り「申請」という無駄な作業が入ってしまったがため、緊急事態宣言から1か月以上たっても、1人の1か月分の生活費としては足りているのか怪しい10万円すら振り込まれないということになってしまいました。

ちなみに、私は申請しますし、その10万は生活に困っていませんので米国株投資の種銭(今までの失敗の補填?)に回ることになります。
もし生活に困っていない人がいたら、何らかの投資に回す、あるいは少しの贅沢として地元にお金を落とすために消費するなどが良いと思います。
投資に回せば、いずれ税金として国に回ってきますし、自分にもより大きな金額となって戻ってくる(はず)ことになります。
地元で使えば、困っている中小の事業者にとって一助になるでしょう。(大手スーパーではだめですよ?)

自民党内部でも、若手議員を中心に10万円を何回でも出すべきだという意見が出ています。大変結構だと思います。1か月10万円くらい出さないと本当に困っている人には足りないでしょう。
そして、今度こそ「申請」なる無駄な作業は反省して排してほしいものです。
2020年4月27日月曜日

インデックス(市場ポートフォリオ)に対する長期投資の考察

はじめに


最近の相場を見て思うことがあり、「ファイナンス理論全史」という本を読むことでそれを言語ができそうな気がしたので、ここでアウトプットしてみます。

インデックスというと、沢山あるETFは大体なんらかのインデックスに連動しているわけですので、ここは敢えて市場ポートフォリオと付けました。
アメリカならS&P500あたりのことを指します。商品名でいえば、VOOならVTI、あるいはVTでしょうか。

インデックスの長期投資における理論的根拠というのは、現代ファイナンス理論になるわけですが、これらについては、いくつかの「仮定」が含まれています。理論は、現実を単純化、抽象化したものだからです。そこから導かれる結論は、誤りというわけではありません。
(そもそも将来のことは誰にもわからないので、現時点でそれが正しい、誤っているとは言えませんが)


ここでいう長期とは、景気サイクル(概ね10年~15年程度)を複数回経過するということで、つまり30年以上とします。


インデックス長期投資が正しい理由



  1. 市場は効率的なので出し抜きはできない。出来ないなら平均に乗るのが正解で、いじくるとリスクとリターンの比率が崩れるだけで、メリットはない。
  2. 短期的な変動はともかくとして、「長期的には」マーケットは右肩上がりなので、とにかくインデックス投資でコツコツ積み立てることで、コストを最小化し、時間を味方につけることで、資産を増やしていく。
  3. 市場はランダムウォークであるため、厳密なマーケットタイミングを読むことはできない。よって、定期的に積み立てていく方が良い。
  4. 市場全体に分散されているので、リスクは消しようがない最小限のものになっている。


まず、この4つの大前提があるのだと思います。
その中で、赤字の部分は私が仮定だと思う部分です。

1つ目の市場は効率的については、「ファイナンス理論全史」を通読されるのが良いのですが、効率的ということに対しての反証はいくらかあります。というか、それなりの意識をもって相場をウォッチしていれば、効率的だと本気で信じる人はいないと思います。
但し、「自分」がそれを出し抜けるかは別です。

2つ目の長期的にマーケットが右肩上がりかという点については、シーゲル本を読まれるのが良いと思います。
少なくとも「過去はそうであった」ことは間違いありません。
シーゲル本によれば、バブルの天井で買っても10年で戻り、30年もたてばプラスだそうです。そんなに含み損を見て待っていられるのか、お金を必要とするところでクラッシュが起こったらどうするのか、といった問題はありますが、一応この仮定は正しいと言えば正しいです。
また、米国株式の歴史を見れば、その間に多くの条件が変わっています。それでも、概ね7%程度のトータルリターンで右肩上がりということは、それなりに期待する理由があるようにも考えられます。
7%でヨシ!とするかは人によるでしょうが、インデックスの「長期&定期積立」では超えるのは難しいでしょう。

3つ目のマーケットタイミングについては、最近でもそうですが、全く読めていません。これは能力や知識量による面もあるとは思いますが、実際の問題として読み切れないものは仕方ありません。
但し、その解決方法が、「長期&定期積立」だけは限りませんが

4つ目の分散については、細かいことは「投資と金融がわかりたい人のための ファイナンス理論入門」を読むのがよいでしょう。
問題は分散された「リスク」というものが、個人投資家にとって重要なのか?という点になります。


インデックス投資をやめる理由


  1. ここ数年は不効率の連続であった。過剰なGAFAMへの集中、跳ね上がるPER、思惑だけであがる一部の株式とそれに引っ張られるインデックス、世界の状況を無視して上昇する相場。
  2. 長期的に右肩上がりと言い切るには、不透明な世界状況。
  3. 暴落が一度起これば何でも下がる中で、バイアンドホールドの効率の悪さとハイリスク性。
  4. 分散の方法は、本当に市場ポートフォリオしかないのか。
先ほどの正しい理由に対比させてみました。

1は、最近私が不効率だと思ってきた市場の現象です。
2018年以降ずっと違和感を抱えて現金ポジションを抱えていたので、まあ見事にしてやられているのですが。
実際問題として市場ポートフォリオ=時価総額インデックスでは、GAFAMの影響が大きすぎると思います。
GAFAMが素晴らしい企業であることを否定するつもりはないのですが、益回りで考えた時にこれが投資に値するリターンがあるのかということについては、疑問を持っています。
しかし、インデックス投資はそのようなことは考えませんので、高値を是正する日が中々来なかったりします。

今の全体的なPER水準にも疑問があります。いわゆるリスクフリー金利(=国債)を考えれば、今の全体的なPER水準も正当化できるとおっしゃる方もいます。
確かに、国債がほぼ0%ならば、株式が3%,4%しか益回りがない状態でも、十分なのかもしれません。
私がこれを気にするのは長期投資だからです。短期投資として、ある程度益が乗れば売り、含み損が出れば切るというのであれば、別に問題ありません。しかし、長期投資ということは、ずっと金利が0%のはずはなく、金利が上がる時期が来ることもあるでしょう。
それも飲み込むほど成長して、適切なリターンをもたらしてくれるのかというと果たしてどうでしょうか?
或いは金利とは関係なく長期投資として、市場参加者が30年先まで右肩上がりを続けると思い、この益回りを感受している(=効率的だとしている)可能性もあります。
ただ、それほど株価が強い(高PER)時代は過去の例からはすでに外れているので、「過去」を理由そのままインデックス投資が正しいのかというと、それは再考する余地があると考えるべきでしょうか。


2は、過去だけを以って長期的に右肩上がりというのは、条件の違いが目につきます。
ざっと思いつくものを上げると

  • 金本位制から離脱してからの年数は、実はそこまで長くない。
  • 金利が低い(今だけかもしれませんが)。
  • 人口動態が右肩上がりとはいいがたい(アメリカはまだ続きそうですが)。
  • 環境問題、人口増加による食料問題などの成長を阻害する要因がある。
あたりでしょうか。
条件の違いを考えれば、右肩上がりになると考えるより、「わからない」と考える方が適切なように思います。

金融や経済の歴史というものを勉強するなかで感じるのは、金本位制時代と今は通貨の供給量などの条件が違うと考えるようになりました。
これが投資の結果にどうつながるのかということ言えないのですが、少なくとも条件としては違うと考えたいです。

また、金利も特にリーマンショック以後は、低金利・緩和が染みついており、金利を上げることへの政治的ハードルはこれまでにない高さとなっているように思います。
金利が低いことに適応してPERが高くても気にせず買うという人が、金利が高い時代のリターンを見て長期投資は大丈夫だと根拠にしているのならば、それは矛盾と呼ぶべきことでしょう。

人口動態については、米国はまだ増加するでしょうが、日本や欧州は減少になるでしょう。リーマンショック後は、チャイナの経済成長が世界を引っ張ってきた面もあります。しかし、そのチャイナも人口動態で見れば少子高齢化国になっています。この問題は、次なる増加国もあるので、そこまで致命的ではないかもしれません。それでも、リーマンショック後のチャイナのように、それらの国がなれるのかというと現時点では不透明に感じます。候補は、インドやベトナム、インドネシア、ナイジェリアあたりでしょうか。

環境問題は、某環境少女が喚いたりしているのは無視するとしても。
新しい技術を生み出す契機になる、企業に効率化を強いるという意味ではプラスの要素もあるでしょう。
しかし、化石燃料が使いづらいということも、チャイナウイルスとは別の構造的な問題として原油安につながっています。原油安が続けば、今の市場をそれなり以上に支えているオイルマネーが消える可能性を考えなくてはなりません。
また、当然ながら、産業構造の変化にも繋がっていくでしょう。


3は、まさに3月の暴落を見ていて、私は現金が7割くらいあったので特に気にせずみていたのですが、フルインベストメント派の中にはネットから消えた人も散見されました。単に気絶投資法とやらを実行され、全ての情報を遮断しているのかもしれませんが。
もし、2が前提であるなら、気絶しても報われるかもしれません。そうだとしても…ですよ。自分の資産が30%、あるいは半減、最悪9割減になって、30年後戻るからへーき!と言えますか?
私は、それは普通の考えとは思えません。
確かにやることは少なく、ミスも起こりにくいため初心者向きと言われますが、(場合によっては)資産を半減させても指を咥えてみていなさいというのは、人に勧め難いものがありますし、自分も耐えられない可能性があります。
さらに、厳密なマーケットタイミングが読めないとしても、投資家として情報を収集し分析をしていれば、厳密には無理でもある程度の割高・割安というのはわからないものではないです。
ハワード・マークスの振り子理論ではありませんが、過去の例から見て右肩上がりが信じられるのならば、過去の例からみて景気のサイクルが来るということも信じてもよいのではないかと思います。
ということは、割高な時にポジションを軽くしておくことで、急速かつぴたりとタイミングが読めない下落に備えるということは不可能ではないと考えます。もちろん、それで利益が減る可能性があることは甘受しなければいけません。

自分が持っている株が上がりすぎている、逆に自分が買いたい株が下がりすぎているということは、そんなに難しいことではありません。PERや益回りは、「いつ」下がるかを教えてくれません。なぜなら相場は行き過ぎるわけで、高PERでも良い企業と思われればドンドン上がっていく場合があり、割安で実力があっても不人気や知られていなければ安いままということはあります。
また、PERや益回りは、あくまでも利益の予想に対して算出されるものですので、予想利益が変われば変化するという点もあります。
それでも、株式に期待できるリターンとリスクフリー金利の相関からして、ある程度の割高なり割安は読めると思います。そのある程度でも、バイアンドホールドを続けるよりは、効率を上げられるのではないでしょうか。


4は、分散投資はある意味で正しいかもしれませんが、市場全体ということは、所謂「クソ」な株が多数含まれることも事実でしょう。S&P500は日本の東証一部よりは優れた企業の集まりであることは確かでしょうが、GAFAMと比べれば「クソ」な企業が含まれていることは否定しがたいです。GAFAMも割高で期待リターンが低くなっているという面では、「クソ」かもわかりませんが…。

分散投資はリスク(ボラティリティ)を下げるということになっていますが、同じように優れていてかつ値動きが一方向ではないという前提がここには含まれると思います。
しかし、実際の市場ポートフォリオには、「クソ」な企業も一杯ありますし、この暴落でもわかるとおり、下がるときは皆下がるのです。ある程度「幅」はあるにせよ。
ということは、市場ポートフォリオだのリスクフリー資産だという面倒なことを考えても大した意味はなく、現金と株でいいのでは?という話になり、株の中で大体同じ方向に行くのならば、「クソ」を並べてリスクが下がった気分を味わうより、優良株だけを並べる方が正しいのではないでしょうか。

VIGというETFがあります。これは連続増配を元にスクリーニングするものです。この基準が正しいかどうかは別として、これによって一定の「クソ」企業は除去されています。その結果、リーマンショックもチャイナウイルスショックも含め、市場連動のETFに比べるとアウトパフォームしています(期間の取り方により変わります)。

もう一つは1で触れたとおり、GAFAM集中により偏重しているため、本来の意味での分散投資になっているのか?も怪しいとも感じます。

強引にまとめると1銘柄しか持たない時、自分の選ぶ数~数十の優良株を持つ時、スマートベータETFでスクリーニングされた時、市場ポートフォリオの時で、ボラティリティが数学的に減るとしても、個人投資家として抱える(資産を失う)危険性にはそんなに大きな違いがあるのかということについて、現代ファイナンス理論とは別の結論を持っていいのかと思います。
1銘柄しか持たなければ、その会社が不正決算でもしていたらアウトです。もしくは何らかの事情でその企業が競争力を急速に失ってもそうでしょう。
銘柄数をある程度増やせば、それは改善されると思います。ETFでも然り(セクターETFは除く)です。ですが、それと市場ポートフォリオの差というと、私はあまり無いように感じます。
もっと言えば市場ポートフォリオで分散するのではなく、債券やREIT、コモディティも含めた分散でないと意味がないのではないかと思います。その様なアクセス性のよい商品はないと認識しています。
そう考えると、市場ポートフォリオには、「クソ株」が混じっているというデメリットばかりが目立ち、分散投資というメリットはそこまでではないと考えます。


最後に、ブラックスワンの生みの親であるタレブの言う通り、過去から未来を推測するということは、ブラックスワンを見逃すわけで、なんらかの理由で今の株価が90%減になって向こう30年たっても今の水準に戻ってこないということは否定できません。
むしろ、そうなっている国に住んでいるのが我々日本人ではないですか。
だからこそ、投資家を名乗るならどんな戦略をとるにせよ、常に出口を考えておいた方が良いと思います。
2020年4月26日日曜日

ファイナンス理論全史(田渕直也著)

ファイナンス理論全史―儲けの法則と相場の本質
理論を知りぬく革命児だけが相場で勝つ。リスクとリターン、投資対象の価値や価格をどう読むべきか?ランダムウォーク理論/モダンポートフォリオ理論/capm/効率的市場仮説/ブラック=ショールズ・モデル/アービトラージ/カオス理論/バリュー投資/AI運用等、100年分の投資理論が体系的に一気にわかる!


はじめに


この本もTwitterで紹介されているのを見て買った本でした。
全史というタイトルの通り、現代ファイナンス理論の歴史と相場の歴史を織り交ぜながらストーリーが展開されていきます。

現代ファイナンス理論自体の説明もありますので、その辺り前提知識が無くても読めるかとは思いますが、事前に読んでおく方がスムーズかとは思われます。

私見として気になった点をいくつか紹介します。


ポイント


1900年にフランスの数学者バシュリエが出した論文が、最初のファイナンス理論として認められています。後に、ランダムウォーク理論と呼ばれる考え方であり、これが示すポイントをまとめると、
  • 将来の価格変動を断定的に計算できない。
  • 確率なら計算できる。
という点になります。
特に1つの目のポイントが投資家や金融業界から強い反発を受け、現代ファイナンス理論の歴史=ランダムウォーク理論とそれに対する反論と相克の歴史とまで言えると筆者は言います。

もう一つの現代ファイナンス理論の支柱がポートフォリオ理論であり、これはハリー・マーコウィッツの博士論文から出たポートフォリオ選択の理論とCAPMが導く市場ポートフォリオがあります。
これを運用として実現する先駆けになったのが、ジョン・ボーグルのバンガードです。

これらに対し、ウォーレン・バフェットを初めてとするグレアム・トッド村の住人のように好成績を収め続ける特定の手法が出てきます。これをアノマリーと呼びます。

効率的市場仮説派は、アノマリーが発生したとしても一時的であり、収益機会を探す投資家がそれを見つけて殺到していくことで、アノマリーは消えて、継続しないとします。
つまり、市場は存在するだけで効率的ではないということであり、投資家がしのぎを削った結果として、効率的になっていくことを示しています。

しかし、これで完全に市場が効率化されてしまうと、アノマリーは見つからなくなり、対価が得られなくなるため賢明な投資家が退場します。その結果、再び効率性を失いアノマリーが生まれることになります。
よって、効率化へ向かう力と完全な効率化を阻む壁が共に内在しており、特定のアノマリーが消えてたとしても、全てのアノマリーがなくなることはないということになります。


ファイナンス理論では起こりえない事象が起こるということを警告した人物としてブノア・マンデルブロがいます。マンデルブロは、相場変動の確率分布を安定分布だと主張しました。それ自体は正確ではないようですが、彼が指摘した「異常事態が起きる確率が平均から遠ざかっても中々下がらない」という性質(ファットテール)は重要な問題でした。
しかし、ブラックマンデーが起き、それを予測可能性の問題から例外として、現代ファイナンス理論が幅を利かせた後に、リーマンショックが起き、強い批判にさらされます。
現代ファイナンス理論は、ファットテールを例外事象として気にしなくてもよいものと思わせたことに欠点があったと筆者は指摘します。

その他に、行動ファイナンスや非対称の収益機会、統計的手法等にも触れられています。


あとがき


この本には、「儲けの法則と相場の本質」という副題がついています。
こうすれば儲かるといった次元の低い話ではなく、儲けが何によってもたらされるのかということを、現代ファイナンス理論をテーマに据えて問われているような本に思います。

読む人によっては、この本によって個人投資家は市場ポートフォリオ(インデックス)を堅持していくべきだと考えると思いますし、またある人にとっては消えないアノマリーを突こう考えるでしょう。あるいは、新しいアノマリーを発見しようとするかもしれません。

その意味で私もすごく考えさせられました。
また、投資を続ける中で考えを変えることあるでしょうが、この本を読んで考察したことは、別にアウトプットしておこうと思います。




現代ファイナンス理論を先に予習するには、こちらの本がおすすめです。

投資と金融がわかりたい人のための ファイナンス理論入門(冨島佑允著)



金融の歴史については、こちらの本も併せて読むと理解が深まります。

金融の世界史(板谷敏彦著)
2020年4月22日水曜日

これから買っていきたい銘柄 Part2



TMO


Part1のページを公開した後に、TwitterでAに近いが買収戦略をとっていて良いという旨の情報をご教授いただきました。
御礼申し上げます。

財務基盤についてはAと甲乙つけがたい感じですが、こちらはEPSが順調に伸びていることを好感しました。

ビジネスについて、年次報告書を見ていきます。

私たちの使命は、お客様が世界をより健康に、より清潔に、より安全にすることを可能にすることです。製薬およびバイオテクノロジーに携わる40万人以上のお客様にサービスを提供しています企業、病院、臨床診断ラボ、大学、研究機関、政府機関、環境、産業の品質とプロセスコントロール設定。75,000人を超える同僚からなる当社のグローバルチームは、革新的なテクノロジー、購入の利便性、医薬品のユニークな組み合わせを提供しています

業態は似ているため、Aと同じような戦略で買うことができるかと考えます。
細かく見るとどちらが〇〇に強いという特徴があるのかと思いますが、私の理解力では年次報告書を読んだだけではそこまではわかりませんでした。
同じシナリオで買えるの株の中で、成長重視ならTMO、(どちらかというと)還元重視がAというのが印象です。

当社の遺伝子科学事業は、顧客を支援する高価値のゲノムソリューションを提供するために使用されるさまざまな機器と関連試薬を組み合わせています研究、臨床、応用市場における決定。当社の製品には、遺伝子発現、ジェノタイピング、またはタンパク質の変化を個々の遺伝子ごとに特定するために使用されるリアルタイムPCR技術が含まれます。

ゲノム系に強みがあるのでしょうか?
この辺りも需要が伸びる可能性が高いと思われるので、面白いのではないでしょうか。


ISRG 


インテューイティブ・サージカルは、ダ・ヴィンチという医療用ロボットを扱う会社で、この分野では大きいシェアを持っています。
但し、ロボットといっても完全に自動で動く…という意味ではなく、医療器具の1つというレベルのようです。

ここを狙うのもAやTMOと理由は近いです。
医療用ロボットという分野自体には、Google等のハイテク企業も参入してきています。そのような分野で生き残るのは容易ではない…とも考えられますが、私見では医療の分野においては乗り替わりのコストは高いのではないかと考えます。
人命を預かるため過去のエビデンスが重視される。実績の少ないものを採用するのは難しい。よって扱う現場の側としても慣れたものを欲しがる。ということは、ネットワーク効果があると言えるのではないでしょうか。
ダ・ヴィンチの特許は切れたようですが、それによって業績に何か影響があるようにはパッと見は見えませんでした。
Vinciシステムは、手術室に3次元の高解像度(「3DHD」)画像を表示しながら、コンソールに快適に座った状態で動作します。この没入型視覚化は外科医を外科領域とその器具に接続します。コンソールに座っている間、外科医は自然な形で器具のコントロールを操作します開腹手術と同様の方法で。私たちの技術は、人間の手首の動きに類似した一連の動きを外科医に提供するように設計されています。

ダ・ヴィンチシステム自体が高価でもありますが、それに加えてメス等の器具も専用のものを消耗品として用意しなければならないので、普及すればするほど儲かるという強力なビジネスを確立しているといえるのではないでしょうか。

1つ気になる点といえば、自動化のレベルが高い医療用ロボットが出現した場合、一気に引っくりかえされる可能性があるのかもしれません。
2020年4月18日土曜日

金融の世界史(板谷敏彦著)

金融の世界史
シュメール人が発明した文字は貸借記録の必要に迫られたものだった。ルネサンス期のイタリアに生まれた銀行・保険業と大航海時代は自由な金融市場をもたらし、国家間の戦争は株式・債券の基を創った、そして今日、進化したはずの国際市場では相変らずデフレ・インフレ・バブルが繰り返される…人の営みとしての「金融」を通史として俯瞰する試み。


はじめに


TwitterのTLで紹介されていた本で、内容に興味を持ったので買ってみました。
古代メソポタミア以来の金融の通史を、比較的平易にかつ興味深いエピソードを中心に語られています。
特に投資家にとって有用なのは、後半の13章以降に書かれている第二次世界大戦以降の内容かと思いますが、今回は通史の中から私的に興味深い内容を取り上げます。
その意味では世界史の理解を深めたり、別観点から見るのにも役に立ちます。むしろ投資家よりも教養向けかもしれません。


ローマ法による財産権の確立


現代人にとっては常識ともいえる私有財産権ですが、社会制度として明確になったのはローマ法だそうです。
すべての形式の財産はひとりの明確な所有者を持つべきであり、その所有はそのような財産に関して契約関係を結ぶ資格を与えられる
その前から個人の財産権についてはハンブラビ法典やアテナイにもあったそうです。

一方、財産権が補償されないケースは、レパント沖海戦でトルコの司令官が軍艦に全財産を持ち込んでいた(留守宅に残せなかった)というエピソードや中世ヨーロッパの資産家の大半が国王に貸し付けたことにより破産したことが挙げられます。

しかし、これは当たり前とはいえず、第二次世界大戦後でも、ソ連や支那のような共産国家と西側の世界を二分するイシューであったともされます。


新大陸から流入した銀による「価格革命」


ギリシャやエジプトなどで蓄えられた金銀財宝は、アレキサンダー大王の遠征で集められ、軍団に報酬として地中海沿岸にばら撒かれ、それを元にローマの貨幣経済が作られたと考えられるそうです。
その後はヨーロッパで銀山開発などもあったようですが、スケールの違う大量の銀がスペインを通じて新大陸からヨーロッパへ持ち込まれ結果、スペインでは一世紀の間に物価が四倍になったそうです。
このような通貨量の増加によるヨーロッパの長期インフレを「価格革命」と呼びます。

この結果として、地代収入で安定していた領主層や最低限の生活をする下層の民衆は生活を脅かされた一方で、商工業の発展が促されたそうです。


ナポレオンとロンドン市場


ナポレオン戦争の勝敗の重大な要因として、筆者は英仏の資金調達能力を挙げています。

英国は、各種国債のクーポンや償還期間を統合した無限永久国債(コンソル国債)を発行し、元々低かった国債の流動性を高め、新たな投機家も加わることで売買の厚みをましていました。また、議会が主導権を握った後、一度もデフォルトしていないという信用がありました。
さらに、当時金融の中心地だったアムステルダムはフランスの衛星国になったことで衰弱し、最終的にアムステルダムをナポレオンが進駐したときに、資金の保全と自由を求める金融事業者を追放したことで、ロンドンが金融の中心地になりました。
同様にドイツのフランクフルトやハンブルクをナポレオンの占領により、ドイツ系ユダヤ人がロンドンへ移住していました。

その一方、フランスはルイ十四世以来デフォルトを繰り返しているため、国債には信用がなく、国債を使った戦費調達が困難でした。ナポレオンは占領地域からの賠償金で戦費を確保し、国債発行を控えて、均衡財政としたそうです。これで信用は回復したようですが、発行を再開できるほどではなく、最後は資金が枯渇したようです。


終わり


これらのエピソード以外にも興味深い内容が多数あります。
金融の側面からみたバブルの理由、第二次世界大戦の間の株式市場、チューリップバブルや南海会社などのバブルの歴史etc

まず重要なポイントとしては、金融というものは社会と不可分なものだということが理解できると思います。
投資をしていると、特にインデックス投資や先物等はそうですが、「何に対して投資しているのか」ということを忘れがちです。
しかし、金融とは社会と切り離された数学や確率の世界だけではないということを、金融の歴史は我々に教えてくれます。
2020年4月17日金曜日

これから買っていきたい銘柄 Part1

はじめに


現状の乱高下する相場の中で投機的なサテライト戦術で遊び散らしていましたが、銘柄探しも並行して行っていました。
その内容について、メモを残しておこうと思います。
財務分析とかではなく、何で欲しいと考えるかということを中心に書いています。

なお、これらの銘柄については、投資を推奨するために挙げているものではありませんので、興味を持たれたとしても、裏取りを十分になさってからにすることを推奨します。
筆者は、投資の結果及び内容の正確性は一切保証しません。
また、抜粋している年次報告書の内容はすべてGoogle翻訳で流し読みしているものなので、記載意図と筆者の認識に相違がある可能性があります。

有名な銘柄


特にわざわざ挙げるほどのものではないが、投資を検討している株。

AAPL
AMGN
BRK.B
CRM
GOOG
JNJ
KO
MA
MCD
MMM
MSFT
ORCL
T
UNP
V
VRSN

赤字が保持していない株です(ETF除く)。
保持していないところから、買っていこうと思います。特に太字の株が個人的に早めに買っておきたいなと考えています。


銘柄選定の概要


筆者が興味を持つ分野は、「環境」「健康」「分析」の3点です。

私見ですが、既に富が行き渡っているこの世の中で、人が何を求めるか、何が不足する可能性があるとなれば、「環境」ではないでしょうか。
環境というと幅広い言い方をしていますが、主に水や食料、大気などが考えられます。

その次が健康です。お金を持った人は長寿を望むのが普通であります。
また、社会が豊かになるに連れて生活習慣病なども増えているため、大衆にかかる医療費も増えることはあっても減ることはないでしょう。

最後の「分析」は、これらの問題を解決するために必要な要素の1つと考えるためです。


他にも面白そうな会社があったら考えてみたいのですが、情報収集能力の限界で見落としも多いと思うので、よろしければTwitterで絡んでもらえると幸いです。


A


アジレント・テクノロジーズです。
分析機器の大手メーカーですが、ライフサイエンスに強みを持つためヘルスケアセクターに属します。
ヘルスケアといえば製薬会社というのが目立ちますが、人が製薬会社を中心にみているのであれば、別路線から攻めたくなるのが筆者です。

私見ですが、製薬会社(バイオ医薬も含む)というのは、特許というワイドモートを持ちます。しかし、この特許が切れる前に次の稼ぎ頭を生み出せるかというとギャンブルの側面があるとも言えなくはないです。
同じヘルスケア分野でも、医療機器や分析・データ系の会社等は、製薬会社に比べると安定して伸びやすいのではないかと考えています。医療機関で実績のあるものは、人の命がかかる分野だけで、乗り換えコストは高く、薬と比べて急により安全で確実な薬が出てひっくり返るみたいなことが少ないのかと考えています。

アジレント・テクノロジーズについては、年次報告書から抜粋ですが
医薬品、バイオ医薬品、CRO、CMO市場。この市場は、製薬業界全体に参加する「営利」企業で構成されています治療研究、発見と開発、臨床試験、製造および品質保証と品質管理の分野におけるバリューチェーン。1つのサブこの市場のセグメントは、コアで新興の製薬会社(「製薬」)です。2番目のサブセグメントには、バイオ製​​薬会社(「バイオファーマ」)が含まれます。受託研究機関(「CRO」)および受託製造機関(「CMO」)。バイオファーマ企業、そしてやや少ないがCROとCMOは通常、製薬業界のバリューチェーンの特定のポイントに参加します。
と記載されています。
つまり、現状ヘルスケア業界は、チャイナウイルスの影響で”不要不急”の手術等が伸びるなどのことがあり、マイナスの見方が出てきています。
しかし、アジレント・テクノロジーズの場合は、BtoBをターゲットとしており、「一時的」に製薬会社等が売り上げを減らしても、急に研究開発の費用は削減できないとなれば、成長軌道に大きな影響が出ないとも考えられます。

また、アジレント・テクノロジーズの事業ポートフォリオには、天然ガスや石油精製に関係する部分があります。この部分が足を引っ張って株価が安くみられるとすれば、却って長期投資家にはお得とも言えなくはないです。

もう一つ事業ポートフォリオで気になっているのは
環境と法医学の市場。当社の機器、ソフトウェア、ワークフローソリューションは、環境市場で次のようなアプリケーションに使用されています。空気、水、土壌および固形廃棄物中の化学汚染物質の実験室およびフィールド分析。環境業界の顧客には、政府のすべてのレベル、産業および製造部門、エンジニアリングおよびコンサルティング会社、商業試験所、および大学。
です。 ヘルスケアで基盤がある上に、環境分野も重視しているのは筆者的に楽しみであります。

HON


ハネウェル・インターナショナルです。
この株はどちらかというと割安だから買いたいというところです。資本財セクターに当たりシクリカル銘柄に該当するように思います。
どうしても暴落相場の時は、ディフェンシブな株(生活必需品とか)を買いたがる人が多いですが、暴落相場で拾うべきは、これから上がる株を買う方が儲かるのです。
なので、上記のMMMもそうですが、資本財セクターは仕込み甲斐があると考えます。セクター全体で買うべきではないと思いますが。

次に、色々な斬新なサービスが続々と出現するハイテクセクターと比べると地味ですが、製造業はそのような会社のサービスを利用して、効率を上げ・コストを下げ・品質を上げることが可能ではないかと考えます。
また、原油安の局面であれば、それ自体がコスト減につながるのもプラスな点です。(いずれ原油価格は戻るとは思いますが)

その中でハネウェルを選んだ理由は、営業CFマージンが比較的高めなのと財務基盤が安定していることでしょうか。
財務基盤がしっかりしているということは、まず生き残れることであり、M&Aを通じてより強固な事業ポートフォリオを構築できる可能性があるということを示します。

ただし、実際買うのはもっと下げ切ってからということになります。
見てわかるとおり、当面多くの打撃を受ける航空業界の影響をそれなりに受けるためです。
現状でもそこそこの益回りに「計算上は」なりますが、比較的遅くまで影響が残ると思うので、引き付けてから買おうということになります。この辺りはMMMも同様です。

もう一つ個人的に考えるシナリオには、チャイナからの撤退が進む場合、トランプ政権の方針的なものもあるので、アメリカの製造業が戻ってくる展開もある程度の確率であるかなと思います。
そういう局面になった場合、想定よりも資本財セクターが大きく伸びる可能性があるのではないかと読みもあります。
特に、ハネウェルの年次報告書には
当社の防衛および宇宙事業部門の経営成績は、防衛および宇宙計画に対する米国および外国政府の予算の混用、およびコンプライアンスリスクの影響を受ける可能性があります。
という記述が記載されています。
逆説的に防衛産業が活発になれば、プラスの影響を受ける場合があることを示しています。


Part2へ続く
2020年4月11日土曜日

【長期投資】3月~4月までの相場の乱高下に対するアウトプット

はじめに


2020年の3月~4月の相場は大荒れでした。
これが暴落というかは人によるかもしれませんが、通常の上昇相場では起こりえない乱高下であることについては、異論無いかと思います。

この相場で得た?と思っていることをアウトプットしておこうと思います。
素人投資家目線風雑記なので、変なところもあるとは思いますが、ご容赦下さい。
まあ、このブログ「雑記帳」ですけどね。


考えていた作戦


いざこのチャイナウイルスが現れた時には、ついに行き過ぎた相場の調整が来たと思いました。理由は、一部の大型株(要するにGAFAM)の吹き上げでS&P500全体でみるとあまり利益が増えていないなどの状態をみて、景気サイクルの末期であると認識していました。
そのきっかけがパンデミックというのは意外でしたが。


つまり、この時点で50%程度の調整はあってもおかしくない、市場は行き過ぎるものだという考えを持っていたため、下がった値段の割に応じてドルコストでちょっとずつ買い下がっていくという方針を考えていました。
詳細は、2月末の月次報告に記載しています。
今持っている資金のうち株に投資してもよいと考える部分から、下落した割合を元に投資額を増やしていくという変形ドルコスト平均法です。


実際どうなったのか


結論からいうとこの作戦はあまりうまくいかずに買い遅れています。
現時点ではということになりますが。

一番の問題は、最高値からS&P500がどの程度下落するかを基準にしたことです。
頭ではわかっていることですが、「相場にいる現在の時点では、最終的にどの程度下がるかはわからない」のです。
だから、20%下げたらこの程度買うというルールをスルーしました。
ぶっちゃけ、下げ速度が速かったので今回はデカいぞと思ってしまったわけです。
しかし、少なくとも現時点では50%下げというのは遠いですね。

ルール破ったお前が悪いんじゃない…というのは確かです。
それでは先に進まないので、人間的な感情や直感の要素を排除したシステムを構築することを考えましょう。

実際にやってみると値段をベースにするというのは、見た目よりも難しいもので、ちょっとザラ場でラインに達したけど、終値ではまだの場合など悩むポイントがあるというのと、値段を必要以上に注視するがために、もっと下げるだろうから残しておいた方が、儲かるなというスケベ心を掻き立てるのです。

もう一つの問題は、買おうとしているものがS&P500のインデックスならこれでいいのですが、個別株とか他のETFを買おうとする場合、S&Pの下落率で動いていいのかと疑問になり手が止まるという欠陥もあります。
厳密に買う対象の全ての株なりETFで%を算出するとタイミングや購入額の割り振りがややこしくなります。

あとは、無関係ですが、サテライトと称して、資産のごく一部でCFDやベア3倍ETFで遊び散らしていました。序盤はよかったのですが、後半はちょっとはっきりしないところで仕掛けて残念な結果に。
注意力散漫になるのと、ルールを無視しやすい雰囲気を作ったのは悪手でした。サテライトはコアにダメージを与えないようにしましょう。
でも、SPXSで3倍ETFの勘所を身にたたき込めたのは、今後(生き残れば)TECLを買おうという考えを持っているので、役に立つ経験だったと思います。ちょっと授業料には高かった。

つまり、ルールの中にある程度「自分で判断する余地」があったということになります。
これは平時においては重要なことですが、戦時においてはそうではありません。戦場で冷静な判断ができる人間というのは限られており、感情や希望、習性を排除しきれないのが人間なのです。だから、新兵の訓練の最初は意思を潰して、命令に従うという反射を仕込むことなのでしょう。相場についていくトレーダーというのもまさにそうで、自らの定めるルールとシグナルに従うという反射を仕込み、意思を潰す訓練が必要なのかもしれませんね。

こういう乱高下の相場はまさに戦場であって、適切に人間が判断できると考えるのは危険です。プロは強力なアルゴリズムを使い徹底的に狩りに来ます。その中で絶対に人間が勝てないとは言いませんが。

購入タイミングは相場に従うのがベストでありますが、先ほども言ったとおりそれを完璧に実行するのは難しいです。長期投資において、タイミングを見計らうことは、利益を増大させる機会を得る一方で、本来の目的である企業の利益の分け前に預かることの妨げになる面があることも確かです。
購入タイミングは、(長期投資において)本質的にあまり重要ではないことを承知して、戦場で無暗に判断を下そうとしないことが肝要でしょう。

但し、購入対象については相場から離れて土日に冷静に吟味すべきです。これは自分の判断で行うべき決断です。
その判断で適切な対象に(判断が難しいなら市場全体のインデックスに)、長期投資すべきかを常に心がけたいものです。


どう行動するか


ここまでと意見を全く翻し、いつ購入するかを早速探るようなノリが始まります。
でも、これは戦場から離れたところで考えているので大丈夫です。購入対象を探るのと同じです。
以下は読まなくてもいい駄文です。

値段がだいぶ戻ってきてS&P500でいうと半値には戻ってきました。
2番底はない!と買い煽る流れも出る一方で、エコノミストの分析ではかなりの経済ダメージがあるというこちらも煽りが出ています。

要するにわからないということです。
しかし、一つ分かることは、「まだ荒れている」ということだけです。VIXの数値もそうですし、世の中もそうでしょう。
「荒れている」ということは、上下どちらもあり得るわけであって、そこでどちらかにかけようとする行為は、1/2の確率を狙う行為なので、あまり分の良い賭けとは言い難いです。
確信を持って楽観なり悲観なりの方であればどうぞ。
しかし、私はまだ1/2、どちらかいうと悲観に寄っているかな、それでも1:2くらいかなというところです。

ポジショントークではありませんが、改めて買う戦略を立案するにはよい土日だと思います。来週からの決算はまた1/2の世界なので。

そこで考えた方針は「色々あったけど、急回復とは考えにくいので、期間をルールとしたドルコストで頑張る」です。(※給与から捻出して行う積立投資とは別)

つまり、ただのドルコストですね。手を加えてしまったがために、「機械的に買う」というところから逸れたことに対し、反省をしているのです。

ある時は叩かれ、またある時は信者がいたりしますが、私の見解は、「いつ、どのくらいか」わからないが1~2年のスパンで下がる(可能性が高い)と考えられる時には便利だと考えています。
ただし、常に最適な戦術ではないし、そもそもその様な戦術はないですが。
もし、3~4年先が底なら、たぶん今一括投資してもよいはずです。底を過ぎて右肩上がりなら言うまでもなく、今すぐ一括投資すべきです。
ドルコストがハマるタイミングが丁度今なのではないか、というのが私見です。

  • ウイルスの行方やそれに対しての治療薬、ワクチンが出来るかについては不確実性が高すぎる。
  • 市場は"織り込む"と言われるが、織り込んでいるものの全体像は明確ではなく、思惑というかアルゴリズムが交錯する中で、本質から乖離しているように見え、却って"織り込まれていない"ことが増えているように思う。特にヘッドラインへの瞬間的な反応が増え、本質的な事象が無視されている。
  • このような上下に振られる状態が続けば、脱落する参加者が増え、どこかで買いが不足する事態があり得る。
  • FEDは良く言えば迅速に行動しているが、悪く言えば引き返せない危険な道へ進んでいる可能性がある。
  • チャイナが脱落し、米国の覇権が継続する流れになるとしても、混乱期がある可能性がある。(チャイナがさらに膨張するなら株式相場全体にマイナス)
ということで、二番底がどうということではなく、2019年までのゴルディロックス相場は既に終わっているということだけは、改めて確認しておきたいです。パンデミックがトリガーを引いたのです。簡単に右肩上がりの相場に戻れるとは考えにくいのです。
もう一つは、結局過去データに頼っていますが、景気後退を伴うショックは少なくとも1,2年に渡り、「長期的に見た」買い場を提供してくれるものであることです。

判断が変われば、当然残り全額をぶち込むわけですが、ドルコストならそれまでは「買っている」ので完全なタイミング狙いよりは"傷が浅い"のです。

辞めておいた方がよかったこと


コア、サテライト問わずに、良くなかったなと思うことを列挙します。

  1. 一次的思考で行動する。
  2. 確率の高いタイミングではなく、微妙なタイミングで動く。
1つ目の一次的思考とは、ハワード・マークスの指摘する概念であります。
実例を挙げるのであれば、「今日はチャイナウイルスの感染者が増えたから、株価にはマイナスだ」「OPECで減産することに合意したから、原油は上がる」といった、単純な反応です。
なぜ、これがいけないのかといえば、誰でもわかることであり、要するに「既に織り込まれている」のです。
常に二次的思考を張り巡らせて、どうするかを考えるのが本来ですが、個人投資家にとって、しかも日本から投資する米国株という情報チャネルの限られるところで、それを続けてマーケットに勝つというのは、容易ではないでしょう。

そこで問題になるのが、2つ目です。
ここでいう確率は、単にチャート上のことだけではなく、アイデアに対し実現する(と読む)確率も含みますが、とにかく一番やってはいけないのは1/2に対して賭けることです。
絶対のない相場だからこそ、動くなら有利だと確信する場面か、あるいは確率を無視して、決められた戦略に則るかのどちらかにすべきだということです。


最後に


最近色々情報収集をして、そこから世界観をもって対応していたのですが、あまり効果がないので趣味の世界として、投資判断には辞めておこうと思いました。呟くだけにします。
そんなに器用じゃないから、全部情報カットしようかなぁ……(笑)



注釈
本項では、所謂新型コロナウイルス(COVID-19)をチャイナウイルスと呼称します。
これは発生国を明示的にするためのものであり、チャイナによる情報戦に対しての意思表示となります。それ以上の意図はありません。