はじめに
元々私は、効率的市場理論には否定的でありますが、知識の幅を広げておくことは悪くなく、いわゆる「プロ」の考え方を取り入れるかはともかくとして、知っておくことにより生かせないかと思い、入門書を探しました。
あらすじ
第一章がプライシング理論について、ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法が説明されています。
その内容を元に、債券や株等の価値を計算する方式を説明しています。
投資家であれば将来キャッシュフローについては、当然の内容だとは思いますが、わかりやすく振り返りができるので、基本を押さえるのには良いかと思います。
第二章がポートフォリオ理論について、CAPM(資本資産価格モデル)を中心に説明されています。
簡単に要旨を抜粋すると
- 資産を無リスク資産とリスク性資産に分ける。
- リスク性資産は市場ポートフォリオに従った割合で保持する。
- 市場ポートフォリオは、リスク性資産の相関を考慮し、最もリスクとリターンの良いライン(効率的フロンティア)である。
- 個人のリスク性向による調整は無リスク資産とリスク性資産の割合で行う。
そして、CAPMでは、市場リスク(ボラティリティ)のみをリターンの源泉となるリスクと考え、個別証券のリスクは分散することで無くなるとします。
さらに、無リスク資産から得られるリターン(ex.米国債の金利)引いたものを、市場リスクプレミアムとします。
CAPM以外の理論としては、リターンを考えずにリスクの情報を元に決める、最小分散ポートフォリオにも言及があります。
第三章がリスク管理について、ここではボラティリティが高まった場合にどの程度の損失が起こるかという観点について、株価の日々の変動が正規分布に従うとして、計算します。1σで68%、2σで95%がカバーされます。
それを超える「非常事態」の考え方として、バリューアットリスク(VaR)が取り上げられています。これは、確率の極めて低いもの(信頼水準以下)を除外した場合に、予測される最大の損失額を指します。例えば1%を信頼水準とすれば、起こる確率が1%未満の事象が除外され、99%の範囲内で最大の損失額となります。
実務ではそれを超える異常事態はあり得るため、ストレステストという形で極端な変動に対するリスク管理行っているようです。
第四章は統計分析として、Excelを用いてこれらの計算をする例が乗っています。
あとがき
ポートフォリオ理論におけるCAPMの要点は、以下の2つだと感じました。
- 効率的市場仮説に従うこと
- リターンの源泉はリスク=ボラティリティであること
要するにこれを理解し、正しいと考えるのかどうかということが、まず1つのポイントだと思います。
この点については、筆者は中立的に書いており、限界があることや一定の仮定に基づく学説であることを記載しています。
投資をしている方でも意外とわかっていないかもしれない、プロの考え方の概略を知ることができ、平易な文体なのでおすすめです。
なお、私は、上記2つにはいずれも懐疑的です。
この点は、ハワード・マークスの考え方が真理に近いと考えます。