2020年3月7日土曜日

株式投資(ジェレミー・シーゲル著)

株式投資―長期投資で成功するための完全ガイド
大恐慌、ブラックマンデー、ITバブル崩壊を乗り越え、いま「百年に一度の金融危機」からも立ち直ろうとしている株式市場で、永続的に資産を積み上げるための知識と技術を凝縮。待望の改訂版。


はじめに


以前ご紹介した「株式投資の未来」の前に書かれた本ですが、こちらはもう少し理論的な本になります。
しかし、シーゲル教授のスタイルはどちらも同じであり、過去のデータを元にして、あらゆる切り口でリターンを確認していきます。
そして、株式こそが真に長期投資に相応しいものであることを明らかにしていきます。


あらすじ


ばっさり省略して、個人的に気になったポイントだけを記載します。
本書の内容からして、全部読むべきだと考えているからです。
その中で個人の判断で未来に当てはまるであろう歴史を選び取るべきです。
(決して面倒になったわけではありません)

  • 仮に、資本主義経済が衰えた時に、どの資産が価値を維持するかは不明だが、歴史的には、経済的・社会的混乱期に、国債の価値は株式に比べて大幅に低下する傾向がある。
  • 長期投資では、明らかに株式の利回りが、債券を上回るが、短期では異なる。1~2年の投資では、5年のうち3年しか、株式が上回らない。一方、主要な株価のピークに投資しても、10年投資すればわずかに長期債を上回り、30年投資すれば長期債の4倍になる。
  • 強気相場と弱気相場を取り巻く様相は、昔と何ら変わらない。株価が上昇すれば楽観論が幅をきかせてさらに上昇すると主張され、いったん崩れて弱気相場に入ると悲観論がはびこり、もっと下落するという主張が正当化される。
  • 企業の規模とバリュエーション(配当利回りやPER等のこと)に注目することで高い長期利回りを獲得できるチャンスがあるが、 常に市場を上回る戦略がないことも認識すべきであり、これらの戦術は忍耐が必要。
  • 投資家が歴史から教訓を学ばないときは必ず報いを受ける。
  • 為替ヘッジは、為替リスクを相殺する方法として魅力的に思えるが、長期投資では必要がない場合もあり、ときには不利益をもたらす場合がある。ヘッジのコスト(金利差)が高くつく場合があるからである。
  • ほぼ例外なく、株価は景気後退期の前に下落し、景気回復の前に上昇する。実際に景気後退が始まる前に、株式のトータルリターンは8%以上も下げている。
  • 過去に株価が大きく動いた原因を検証すると、重大な政治・経済ニュースに関連付けられるのは1/4にも満たない。
  • 世界的なできごとは短期では市場にショックを与えるかもしれないが、長期では利回りを損なわない。
  • 自らの期待を過去の範囲内にとどめること。
いま、下がっているときなので、それを意識したようなピックアップかもしれません。

考察


シーゲル教授の主張は明確であり、長期投資であれば株式に勝る投資先はないということです。個人的には自明ですが、それでも暴落時に再度読み直すことで、「歴史の裏付け」という安心感を得ることができます。
しかし、未来を考える際に、過去をどう捉えるかというのは難しい問題です。
私見は、ツイートで述べているので参考までに示します。


シーゲル本からは、市場平均をアウトパフォームし続けることの可能性を考察しています。銘柄選定については、前回の株式投資の未来で述べていますので、今回は「機会を狙うこと」について考えてみたいです。
実は正解(?)は既に本の中に記載されており、景気の山と谷を1か月前に予測して短期国債と株式を切り替えた場合、バイアンドホールドのリターンを毎年1.8%、30年で60%上回るという結果です。

この場合における投資家にとっての問題というのは、後付けで判定される景気の山なり谷では売買の判断はできないため、市場に居ながらにしてそれが可能なのかという点、もう一つは実際の景気の山なり谷と株価の山なり谷には、若干のズレがあることです。
まず、本書では「景気の転換点を正しく予測する」ということ自体は非常に困難なことが、過去の経済学者やエコノミストの動向から示されています。
先行指標と呼ばれるものもありますが、結局は再現性のある手法はないと言ってよいでしょう。

さらに、株価の変動は何も景気の動向だけではありません。それを物語るのが「過去に株価が大きく動いた原因を検証すると、重大な政治・経済ニュースに関連付けられるのは1/4にも満たない。」という事実になります。
また、様々なニュースについても、市場がどう動くかは、市場が何を織り込んで値をつけていたかであり、エコノミストの「コンセンサス」と言ったもので判断できる部分もあります。シーゲル教授が「油断のならないゲーム」と表現する通り、個人投資家には現実的な解はないように考えます。

このことが示すのは、日々の株価の予測が如何に現実的ではないということです。
遠く過ぎた過去の株価を見たときに何が理由で動いたかがわからないのに、何が起きるかさえもわからない未来の株価が予測できるとは、普通考えられないからです。

一方で、本書で示されているような(債権と比較し)高いリターンは、そのような技術を必要としていません。万が一、株価がピークのタイミングで投資したとしても、10年以上の時間があれば、債券のリターンは超えることができます。
この過去を頭に入れ、まずは相場にお金を入れ続けることから、個人は進めていくべきものと考えられます。

しかし、それでも人間は市場に勝ちたいと思うのが、本能ではないでしょうか。
そこで最後に一言「自らの期待を過去の範囲内にとどめること。」です。
その上で勝ちたいという思いを込めて本書を読めば、また別の見方ができると思います。