理論を知りぬく革命児だけが相場で勝つ。リスクとリターン、投資対象の価値や価格をどう読むべきか?ランダムウォーク理論/モダンポートフォリオ理論/capm/効率的市場仮説/ブラック=ショールズ・モデル/アービトラージ/カオス理論/バリュー投資/AI運用等、100年分の投資理論が体系的に一気にわかる!
はじめに
この本もTwitterで紹介されているのを見て買った本でした。
全史というタイトルの通り、現代ファイナンス理論の歴史と相場の歴史を織り交ぜながらストーリーが展開されていきます。
現代ファイナンス理論自体の説明もありますので、その辺り前提知識が無くても読めるかとは思いますが、事前に読んでおく方がスムーズかとは思われます。
私見として気になった点をいくつか紹介します。
ポイント
1900年にフランスの数学者バシュリエが出した論文が、最初のファイナンス理論として認められています。後に、ランダムウォーク理論と呼ばれる考え方であり、これが示すポイントをまとめると、
- 将来の価格変動を断定的に計算できない。
- 確率なら計算できる。
という点になります。
特に1つの目のポイントが投資家や金融業界から強い反発を受け、現代ファイナンス理論の歴史=ランダムウォーク理論とそれに対する反論と相克の歴史とまで言えると筆者は言います。
もう一つの現代ファイナンス理論の支柱がポートフォリオ理論であり、これはハリー・マーコウィッツの博士論文から出たポートフォリオ選択の理論とCAPMが導く市場ポートフォリオがあります。
これを運用として実現する先駆けになったのが、ジョン・ボーグルのバンガードです。
これらに対し、ウォーレン・バフェットを初めてとするグレアム・トッド村の住人のように好成績を収め続ける特定の手法が出てきます。これをアノマリーと呼びます。
効率的市場仮説派は、アノマリーが発生したとしても一時的であり、収益機会を探す投資家がそれを見つけて殺到していくことで、アノマリーは消えて、継続しないとします。
つまり、市場は存在するだけで効率的ではないということであり、投資家がしのぎを削った結果として、効率的になっていくことを示しています。
しかし、これで完全に市場が効率化されてしまうと、アノマリーは見つからなくなり、対価が得られなくなるため賢明な投資家が退場します。その結果、再び効率性を失いアノマリーが生まれることになります。
よって、効率化へ向かう力と完全な効率化を阻む壁が共に内在しており、特定のアノマリーが消えてたとしても、全てのアノマリーがなくなることはないということになります。
ファイナンス理論では起こりえない事象が起こるということを警告した人物としてブノア・マンデルブロがいます。マンデルブロは、相場変動の確率分布を安定分布だと主張しました。それ自体は正確ではないようですが、彼が指摘した「異常事態が起きる確率が平均から遠ざかっても中々下がらない」という性質(ファットテール)は重要な問題でした。
しかし、ブラックマンデーが起き、それを予測可能性の問題から例外として、現代ファイナンス理論が幅を利かせた後に、リーマンショックが起き、強い批判にさらされます。
現代ファイナンス理論は、ファットテールを例外事象として気にしなくてもよいものと思わせたことに欠点があったと筆者は指摘します。
その他に、行動ファイナンスや非対称の収益機会、統計的手法等にも触れられています。
あとがき
この本には、「儲けの法則と相場の本質」という副題がついています。
こうすれば儲かるといった次元の低い話ではなく、儲けが何によってもたらされるのかということを、現代ファイナンス理論をテーマに据えて問われているような本に思います。
読む人によっては、この本によって個人投資家は市場ポートフォリオ(インデックス)を堅持していくべきだと考えると思いますし、またある人にとっては消えないアノマリーを突こう考えるでしょう。あるいは、新しいアノマリーを発見しようとするかもしれません。
その意味で私もすごく考えさせられました。
また、投資を続ける中で考えを変えることあるでしょうが、この本を読んで考察したことは、別にアウトプットしておこうと思います。
現代ファイナンス理論を先に予習するには、こちらの本がおすすめです。
金融の歴史については、こちらの本も併せて読むと理解が深まります。
金融の世界史(板谷敏彦著)