2020年5月24日日曜日

隷属なき道(ルドガー・ブレグマン著)

隷属なき道
オランダの29歳の新星ブレグマンが、「デ・コレスポンデント」という広告を一切とらない先鋭的なウェブメディアで描いた新しい時代への処方箋は、大きな共感を呼び、全世界に広がりつつある。最大の問題は、人間がAIとロボットとの競争に負けつつあること。その結果「中流」は崩壊し、貧富の差は有史上、もっとも広がる。それに対する処方箋は、人々にただでお金を配ること、週の労働時間を15時間にすること、そして国境線を開放することである。それこそが、機械への『隷属なき道』となる。


はじめに


ベーシックインカムは私も何度も取り上げているテーマですが、それについてオランダの若手ジャーナリストが新しい目線を提供している本です。
「働かざる者食うべからず」からの古い思想から脱却できない日本人に、この新しい目線を考えてみることは重要のように感じます。


あらすじ



筆者は、現代の真の危機について、「より良い暮らしを思い描けなくなっていること」にあるとします。
中世の時代からすれば現代はユートピアそのものであるが、新たな夢を描けないため、富裕国の人の大半は、子供たちは親世代より悪い時代を生きることになると信じているそうです。
そして、資本主義は豊穣の地の門を開いたが、資本主義では豊穣の地を維持できず、別の方法を見つける必要があるとします。


その方法として筆者はベーシックインカムを主張します。
現代の福祉は「働かざる者食うべからず」の発想からなりたっており(聖書にもこの教えはあるそうです)、貧乏人はお金を上手く使えないといおう前提のもとで、就労重視の様々なプログラムが行われています。

しかし、この前提は間違っており、フリーマネーを手にした人は、そのお金を適切に使い、収入を増加させていたり、学業成績を向上させる、人々が健康になるといった良い効果が実際に確認されています。
一般的な固定観念である、フリーマネーをもらうと堕落するというものは誤っていたのです。

しかし、このような「ユートピア的」な画期的なことは、3つの根拠による攻撃を受けるようです。無益だ・危険だ・計画どおりにいかないと。しかし、ユートピアは実現するとたちまちどこでも当たり前のものと見なされるようになるとします。かつての民主主義のように。

そして、ベーシックインカムの有効性について、筆者は貧困がもたらす欠乏の害を考えるべきだと主張します。
さらに、貧困は「相対的貧困」がすべてであり、国がいくら裕福になろうと、不平等はつきものです。格差社会で生きる人は他人にどうみられるかをより気に掛けるため、結果として生じるストレスは、病気や慢性的な健康問題につながりやすい。
このことについて筆者は「病気を治そうとせず、症状を抑えることばかり考えている」と評します。
それでも良心が痛まないなら、財布にとっても良いことを考えることを勧めます。

その他、GDPの意味合い、労働時間の削減、国境を開く意味についても本書では触れられていきます。


考察


ベーシックインカムを考えるにあたり元々私は、「財布」のことしか考えていませんでした。複雑になった福祉制度を維持し、面倒な手続きとそれを行う公務員を雇用し…という、労働のための労働を排し、純粋にお金を振り込む方がコストが安いということです。

この本から得られた視点は、ベーシックインカムによるフリーマネーは貧者を堕落させるのではなく、資源があることでその資源を活用して、幸福の最大化を目指すということでした。これは私も想像に至っていないことで、貧富の格差が広がった結果、貧しい側は何もできなくなっており、却って無気力になっているということです。

もう一つは、既存の概念だとフリーマネーをもらって(金銭的な)生産性のない活動をするというのは悪(怠惰)ということでありますが、それは一面的なものの見方であり、GDPのような旧来の概念に捕らわれてはいけないと感じました。

本当の豊かさとは何か、より良い暮らしとは何かということを考えていけば、ベーシックインカムを採用し、AIを働かせて裕福な生活を維持し、人間はよりよい人生を考えていく、そのような時代が来ているように感じます。



私のベーシックインカムに関する考えは、以下の記事をご覧ください。

日本復活へ一市民の妄言2019 その2
2020年5月17日日曜日

中国の「核」が世界を制す(伊藤貫著)

中国の「核」が世界を制す
そのとき、アメリカは「中国の軍事的脅威」から日本を守らない。日、米、中の政治指導者、知識人が日本国民に読ませたくない「禁断の書」。

はじめに


最近米中関係が取りざたされる場面が増えてきました。
今後の展開を考える上で必要と思ったので、かつて国際政治、国際関係、安全保障を学んでいたころの本を読み返していました。
少し古い本(2006年)ではありますが、この本が指摘していたことが、現実のものになっていることやこの考え方を理解しておくことは肝要ということでメモを残しておきます。


あらすじ


筆者はまず国際関係を理解するために、以下のパラダイムを理解すべきとします。
(この辺は改めて説明してみたいと予定しています)
  • リアリスト・パラダイム
  • ウィルソニアン・パラダイム
日本人に理解しやすいのは「ウィルソニアン」の方で、いわゆる「国際法・国際組織、経済の依存性などを重視し、それによって戦争しなくなる」という、いわゆるリベラル的な考え方です。

一方、リアリストは「現実主義」であり、「強制執行能力のある世界政府や世界警察がない時点で、国際法や国際組織に依存するのは現実的ではないとし、バランスオブパワー(軍事力の均衡)を重視する」という考え方です。

筆者はリアリストの考え方に沿っており、アメリカやチャイナの指導者もリアリストの考え方で動いているとし、米中関係の実態を紹介し、日本がどのような防衛をすべきかということを紹介します。


その上でチャイナの戦略を要約すると、
  • 2020年頃まではアメリカとの本格的衝突は避け、現状の有利な国際経済システムを維持する。
  • アメリカに対して、覇権争いをしないという情報戦を行い、アメリカがチャイナ封じ込めを始める時期を遅らせる。
  • 日本に自主防衛能力を持たせない。
  • ロシア・EU・南朝鮮・東南アジアを味方につける。
であると解説しています。
まさに現実のものになりました
では、その目的は何かといえば、「アメリカをアジアから駆逐する」です。
それはつまり、漢民族が19世紀初頭に支配していた中華勢力圏を回復することになります。

これについて興味深いエピソードを1つ。アメリカが入手した、チャイナ政府の内部文書には、「2020~2030年頃に米中関係はもっとも危険な状態になる」と分析されていたそうです。
このあたりで、経済力が均等に達するが、軍事力が総合的上回るのは2030年頃であり、その間にアメリカはチャイナを潰すために厳しい対抗策を実施すると予測していたそうです。

そして、この「台頭」には、歴史上の類似点があります。それは、19世紀ドイツ、ビスマルクの「平和的台頭」という帝国強大化政策です。
上記で要約したチャイナの戦略のうち、上2つはドイツ帝国のものと酷似しています。
その歴史において何が起きたかといえば、欧州のバランスオブパワーが崩壊した結果としての第一次世界大戦です


もう一つ日本人が考えておくべきだと私が思う点に、チャイナの軍人や学者が挙げる、チャイナが核開発をした理由があります。
  • 米ソは核武装した覇権主義国家であり、チャイナはこの2国を牽制するために自主的な核抑止力は不可欠である。
  • ソ連はチャイナの核開発に反対し、ソ連の核の傘にチャイナも依存しろという。しかし、アメリカがチャイナを核攻撃したとして、それに報復するためにソ連がアメリカ核を打ち込むことは(自国へのリスクを考えれば)ありえず、核の傘は機能しないものである
  • 貧しく予算の限られたチャイナが、その範囲で米ソに対抗するためには、通常兵器より核兵器の方が、はるかに高い投資効果を得られる
  • 国際社会で真の発言権があるのは核武装国だけである。核兵器を持たない国は、核武装国に恫喝されれば、屈服するほか無い(報復できない)
そして、この核の存在がチャイナのアメリカに対する交渉力を引き上げており、それは日本に対しても同じです。彼らの傲慢、高圧的、一方的な態度の背景には、核戦力があると指摘します。

筆者は、小型の核弾頭とそれを潜水艦から発射する術を持つことが必要だとしています。その核抑止が必要なことをアメリカに説明するロジックが以下です。
  • 核の傘では、近隣の核保有国であるチャイナ・露国・朝鮮からのニュークリア・ブラックメール(核を打ち込むという脅し)に対し、頼りにならない。これらに脅かされる日本が自主的な核抑止力を持つのは、独立国としての義務である。
  • 日本人の国防よりも、日本が核を持たない方がいいというアメリカの覇権利益を優先させるのは、道徳的に正しくない。
  • 日本が核を持つとNPTは壊れるというが、NPTの本来の目的を核武装国は守っていない。東アジアでNPTを守っているのは日本だけであるが、そのようなお説教をされるのは欺瞞に満ちている。
  • アメリカは集団的自衛権を行使し、米軍と歩調を合わせることを要求する一方で、日本に自主的な防衛力、核抑止力を持たせようとしない。これは利己的かつ狡猾であり、このようなやり方は反米感情を高めるだけであり、アメリカにとってマイナスである。
  • 既に抗戦能力を失っている日本に2度の核攻撃を行い、大量虐殺という戦争犯罪を行ったアメリカが、その犠牲になった日本に対し、チャイナ・露国・朝鮮が核武装しても日本だけには核抑止力を持たせないと説教するのは、グロテスクではないか?
筆者は、このようにパブリックな場で核武装を論じることや青年たちに、国際関係・外交・国防の知識を持たせるための「徴学制」を提案します。


考察


私はこの分野の本を読み、大学で講義を聞いた程度の知識しかないです。
しかし、その私でも常日頃思うのは、如何に日本人の大多数が、この分野について「無知」であるかということです。

本書は、ほぼリアリズムの視点から書かれている本です。それは、アメリカとチャイナという国に焦点を当てている面があるからであり、ウィルソニアン(リベラリズム)が間違っているということではないと思います。

しかし、大国間の外交、非民主主義の政体が違う国との外交、文化的共通性のない国との外交には、明らかにリアリズムの方が実態を捉えているように考えます。


ところで、日本人は、異常なほどの反戦・反核教育を受けており、国際社会・軍事における核というものの意味を全く考えていません。考えているごく一部の人や官僚・政治家は、極端にウィルソニアンに偏った考えをしています。
しかし、それは非常に危険なことだと思います。
何故かと言えば、それは国際社会の潮流を理解していないということであり、大東亜戦争に発展する過程で、国際社会の潮流を無視した行動を取り続けた結果、勝ち目のない戦争で破滅したことと全く同じだからです。


ただ1つだけ、私が本書に賛成しかねる部分があります。核武装をオープンに議論することです。そのようなことをしてしまえば、妨害を蒙ることは間違いないです。
オープンに議論をして国会で議決などしてしまった暁には、もれなく「核開発を辞めろ。さもなくば、東京に核を打ちこむ。」とチャイナに恫喝されて終わりです。

核開発は徹底して秘密主義で行い、最後の最後でそれが現実のものであることを証明するための実験をするというやり方でなくてはいけません
核抑止力を持ち、核を打ったら反撃されるとわかる段階までくれば、他国は干渉できません。これは、インドやパキスタンの例をみればわかるでしょう。

そのためには、機密を守る体制や使途を公開しない多額の資金を必要とします。現在の日本で、それができる体制も政治的意思を持った人間もいないので、残念ながら核開発は現時点では、非現実的と言えます。

だから、日本がすべきことは、まず国防の考え方を、選挙を通じて政治家に反映し、軍隊と情報機関をきちっと整備することです。これが核開発に入れる最低条件かと思います。

ちなみに、ニュークリア・シェアリングという概念があります。NATOにおけるもので、独伊などに米国所有の核が配置されているようです。
これと近しいことを日本ができるかというと、アメリカ側の判断が難しいですが、今後チャイナが強硬になったとき、かつ民主党政権が誕生しなかったとき、このような議論が沸く可能性はなくはないです。
ただし、現状日本の国防に対する考えはこの程度なので、まともに取り合われないのがオチでしょう。

もし、ニュークリア・シェアリングが成しえたとして、自主核抑止の代わりになるのかといえば、これはやってみないとわからないというのが、正直なところです。
核抑止というのは理論の世界ですが、実際にはニュークリア・ブラックメールをぶつけ合わないと実証実験ができないためです。
しかし、アメリカが所有する核を日本の判断で、好き勝手に発射できるものではないとなるはずだと予測されます。
その場合にはチャイナがメッセージを正しく受け取らず(ある意味ニュークリア・シェアリングの欺瞞を喝破しているとも言えるが)、抑止に失敗するという可能性も考慮すべきでしょう。

確実なのは、自国の意思のみで確実に発射できる核武装であり、かつ潜水艦等の自国の領土が壊滅しても、核報復する能力を維持できる態勢でしょう。
日本にとっては、チャイナ・ロシア・朝鮮くらいがターゲットで、欧米を対象とする理由はありませんので、地球の裏側まで届く必要はないですが、それにしたって現状の兵器体系では不可能でしょうから、自主核抑止力を持つというのは、簡単にできることではありません。

2006年当時でも間に合ったか不明ですが、今から議論ではあまりにも遅きに失しています。だからといって議論に背を向けてはならないでしょう。
2020年5月6日水曜日

ビジネスモデル・ナビゲーター(オリヴァー・ガスマン他著)

ビジネスモデル・ナビゲーター
勝ちパターンは55。成功の秘訣はビジネスモデル革新。独ボッシュも採用する欧州発のイノベーション手法。


はじめに


こちらもTwitterで紹介されている本で興味をもったので買ってみました。
新たなビジネスモデルイノベーションをどうやって起こすかという話があり、その中で既存のビジネスモデル55種(多い!)を紹介しています。

今回は投資に役立つ本としての読書しておりますので、Part1部分のビジネスモデルイノベーションの重要性や方法論については読み飛ばしております。

私が読んで気になったビジネスモデルをご紹介し、考察を加えていこうと思います。

あらすじ


デジタル化


既存の製品やサービスのデータをデジタル製品として取り扱い、無駄の削減等のメリットを実現します。


顧客データ活用


ビジネスモデルのコンセプトは「データは新たな原油だ」

データはただそこにあるだけでは、原油と同じで役に立たないですが、収集した顧客データを利用し、データ分析を行うことで、意思決定の強力なツールになります。
これらのデータ活用には、プライバシーの問題など批判を浴びるケースもあります。


ロックイン


顧客があるベンダーやそのサプライヤーに依存しなければいけない(切り替えコストが高い)状態をいいます。
その方法は、契約で約束させる方法、専用品の購入が必要な製品から長い付き合いの営業担当を変えにくいといったものまで様々です。


サブスクリプション


顧客が製品やサービスを一定期間の間使用するもので、月などの期間単位支払うものです。企業からは安定した収入が期待でき、顧客はつど購入するよりは手間はなく、所有リスクを回避できます。


考察


これらのビジネスモデルはもちろん単一でも優れたものですが、本書が55ものビジネスモデルを紹介している(似たようなものも結構ありますが……)、既存の組み合わせの中からでもビジネスモデルイノベーションを生み出せるということにあると言います。

投資家としては、投資先の会社のビジネスモデルが何に該当するかを考えてみることにより、将来この会社が成長するのかということを考える手がかりに成り得るのではないかとともに、リスクを考えるときにも役に立ちます。


デジタル化


現代において、ライバルを含めて全くデジタル化されていない分野というのは、ほぼないでしょう。では、もう過去のビジネスモデルなのか?というとそう言い切るのは早計に感じます。
なぜなら、多くのビジネスモデルの土台になっており、またより最新のデジタル技術を用いることで効率化できる場面というはまだまだあると考えられます。

技術革新によって、既にデジタル化されているビジネスモデルさえも変わることは考えられます。
例えば、映画のレンタルにしても、最初はレンタルビデオ店でした。途中からネットで借りてポストで返却のようなやり方になり、現在ではネットフリックスのように、ネット上で映画が見れることになっていきました。
初期段階では多くの店舗に大量の在庫が必要でしたが、受付をネットのみとすれば店舗は減らせます。最終的にネット配信となれば、店舗も在庫もいらなくなります(サーバーが必要になりますけどね)。


顧客データ活用


このビジネスモデルでは、
  • その会社が適法にデータを収集しているのか?
  • 収集したデータの活用は顧客から見て納得がいくものか?
  • 収集したデータを活用して、さらにビジネスを展開できないのか?
などは考えてみたいことです。
いくらデータが、新時代の原油のように活用することで新しい価値を続々と生み出せるとしても、そのデータ活用が違法やグレーであっては理解が得られないでしょう。
どうしてもプライバシーはセンシティブな問題になります。
そして、単に自社が稼ぐだけではなく、顧客にとってデータ活用が有意義でなければいけません。それでなければ、顧客からデータの提供を止められる可能性があります。
内容にもよりますが、個人情報の場合はオプトアウトといったこともあります。
理解が得られないでは済まずに、訴訟リスクを抱えることになっているかもしれません。


ロックイン


このビジネスモデルは、一度ロックインに成功すれば安定的なキャッシュフローを得ることができます。
  • どの程度ロックインされたビジネスからキャッシュを得ているか?
  • ロックインの強さ(依存度)はどうか?
  • そのロックインされたモデルを覆される可能性はないか?
などが考えられるでしょうか。
ロックインされたビジネスが如何に強力でも、あまりキャッシュになっていなければ意味がありません(何でもそうですが)。
ロックインといっても幅広く、営業力が高いというのだと私は弱いと思います。競争力を持つ営業マンを維持・育成しなければなりませんので、人的コストが高いです。

本書で例示されるコーヒーマシンのような専用品の購入が必要な製品の場合は、より強力なロックインとはなります。
しかし、そもそもそのモデル自体がひっくり返されるような競合が現れれば、ロックインが如何に強力であっても続かないこともあるでしょう。


サブスクリプション


このモデルも猫も杓子もという感じで、いささか過熱気味の様相を呈しています。
都度購入とかしなくてよいのは便利ですし、多く使えば顧客からするとお得です。
ビジネスモデルとしては
  • 本当に継続してもらえるものなのか?
  • 投資したキャッシュを回収する算段が立っているのか?
  • サブスクリプションが適切なのか?
などが考えられるでしょうか。

最初は顧客からしても気軽に始められます。ということは逆も然り。固定費としてのしかかるその負担を見た後、顧客がさっと解約できるわけです。
つまり、サブスクリプションとして提供しているビジネスが、きちんと継続されていなければいけません。
また、この手の企業の特徴として、先行投資がとにかく多いです(典型はネットフリックス)。それを長期間、安定したキャッシュフローで回収していく想定になっています。
それが実現可能かという点は厳しくチェックすべきでしょう。

そして、最後に、本当にそのビジネスはサブスクリプションが適切なのかということも考えておきたいです。最近はとにかく流行りものに乗っているケースが多いので、本質的には意味がなかったり、既存ビジネスの価値を毀損しかねないサブスクリプションもあると思います。
2020年5月2日土曜日

チャイナウイルスの救済について思うこと

はじめに



本項では、所謂新型コロナウイルス(COVID-19)をチャイナウイルスと呼称します。
これは発生国を明示的にするためのものであり、チャイナによる情報戦に対しての意思表示となります。それ以上の意図はありません。

このチャイナウイルスでは様々な被害が出ています。それらに対して、どのような救済がされるべきかを考えてみます。

※途中まで書いて寝かしていた駄文に追記しています。本当はもっとあれこれ書くつもりだったような……?


救済されるべきものは何か


まず、疫病の蔓延というものは基本的に誰かの責に帰するものではありません。
(チャイナやWHOについては責任を負うべきだと、個人的には思いますが)

ということは、誰かが誰かに対して補償といったものは発生するものではありません。
最近、巷で言われるような自粛要請をするなら補償しろといった類の意見は的外れです。
自粛は疫病が流行っているからであって、政府の責に負うことではないからです。
別の言い方をすれば、政府は自粛要請というトリガーを引いていますが、無かったとしても何れ疫病がより広がれば、客が来ない、労働者が来れない等の事情により営業はできなくなるわけです。

では、チャイナウイルスの被害者は救済されるべきではないのかというと、それでは社会が不安定になってしまいますから、被害を受けた「個人」については補償をすべきです。
アメリカ等でもそうですが、一時的に失業をしてしまった個人を対象に現金給付などをするのは、個人の当座に対して資金を提供することで、公共料金や食料等の必要な支払や借金の返済などを滞らせない、つまり社会の血流であるお金の流れを止めないことと最低限の生活を保障することで、チャイナウイルスの脅威が消えて、社会が正常化したタイミングで早く復旧できるようにする狙いがあるのです。

一方、救済されるべきではないものがあります。
その筆頭が企業を含めた「事業」です。
事業は平常時に利益を得ており、避けられないリスクをヘッジするだけの資金力を得ています。経営者にはリスクに備えるべき義務があります。
もちろん、コロナを予測することは不可能ですが、一定の備えとしてキャッシュを確保しておくことは不可能ではありません。

もう一つの理由として、個人は非常時に救済しなければ、生死に直結したり、社会の安定性に関わります。しかし、事業は本当に必要なものであれば、一時の異常事態を過ぎたところで再開し、再び利益を上げることができます。
逆に言うと、チャイナウイルスショックで倒産するような企業は、そもそも利益率が低すぎて社会に価値を生み出していないか、経営者が怠慢であったと言えます。

また、「救済」する対象を無制限にすれば、「事業をしている」と称する輩による窃取や本来は自力で生き残れるはずの大企業がそれを手にすることになり、「救済」のつけを一般市民が(増税など)で被るという本末転倒な事態になります。
では、制限すればよいのかというと、今度は政府が対象を選別することは、常に公平性の疑問がつきまとい、またその能力も持っていないと思います。

資本主義だからこそ、市場の力で成すべきことだと思います。
本当に社会的に必要なものであれば、ある事業が倒産したとしても、ニーズを満たするために誰かが参入してくるのです。そうやって危機に備えず、必要な手を打てない事業者が淘汰される過程で経済はより強化されていきます

別の見方として、内部留保をため込み、研究開発を怠った企業だけが生き残るから、優良企業は救済せよという意見も見ました。
これにも私は明確に反対します。
金融市場が生きている以上、社会的な意義がある会社は社債を発行して資金を調達することは可能です。あるいは、金融機関からも借りることができるでしょう。
すでに、金融緩和をやり切っている今の段階で市場から資金調達ができない、もしくは不利な条件でしか調達できないとしたら、それは市場から淘汰されるべきだと見做されていることの証左と言えましょう。

また、法人税も利益が上がらなければ、課税の対象にはなりませんので問題にならないということになります。それでもやるとしたら、固定資産税を減免か支払い猶予程度に止めるのがよいでしょう。

救済の方法は何が良いか


色々な方法が出ています。消費税減税、現金給付、商品券、和牛券……。
しかし、現実的に国が個々人が何を抱えているかということを把握できるとは考えにくいです。緊急時で急がれる時こそ、スピーディに、確実に、公平に救済すべきです。

そう考えると、消費税減税はあまり効果がありません。なぜなら、消費する額に応じて、効果が高まるので、富裕層というか消費する余裕のある層に有利なやり方になります。
経済対策としてはやるべきです。あくまでも救済策としての話です)

現金給付は、一番確実な方法です。どんな用途にも使えます。そして、コストも余計なことをしなければ一番かかりません。
しかし、残念ながら余計なことをし過ぎるので、たぶん時間もかかりコストもかかります。
その筆頭が「所得制限」です。金持ちに配るのはけしからんという、ちっぽけなルサンチマンのために、本来救済されるべき弱者が救済されなくなるという典型です。
当たり前ですが、対象者を選定することそのものがコストです。そのことを理解すべきです。
もちろん、事前にマイナンバーに全ての情報を紐づけていれば、数分で昨年の所得がいくら未満とかいうピックアップは可能でしょう。でも、その人が本当に今困っているかは、昨年の所得ではわからないわけで、色々訴えてくる人が出てきたりするとややこしい話になります。
一律のお金をばっと配ってしまうのであれば、マイナンバーに紐づく銀行口座に振り込むだけなので簡単な話であります。(ベーシックインカムについて同じことを主張しています

商品券なり和牛券はもうお話にならないでしょう。

(5/2 追記)

結果として、10万円を申請した人に配ることになりました。
指摘した通り「申請」という無駄な作業が入ってしまったがため、緊急事態宣言から1か月以上たっても、1人の1か月分の生活費としては足りているのか怪しい10万円すら振り込まれないということになってしまいました。

ちなみに、私は申請しますし、その10万は生活に困っていませんので米国株投資の種銭(今までの失敗の補填?)に回ることになります。
もし生活に困っていない人がいたら、何らかの投資に回す、あるいは少しの贅沢として地元にお金を落とすために消費するなどが良いと思います。
投資に回せば、いずれ税金として国に回ってきますし、自分にもより大きな金額となって戻ってくる(はず)ことになります。
地元で使えば、困っている中小の事業者にとって一助になるでしょう。(大手スーパーではだめですよ?)

自民党内部でも、若手議員を中心に10万円を何回でも出すべきだという意見が出ています。大変結構だと思います。1か月10万円くらい出さないと本当に困っている人には足りないでしょう。
そして、今度こそ「申請」なる無駄な作業は反省して排してほしいものです。