2019年12月7日土曜日

NISA制度の愚 また話をややこしくするのか

今朝、NISAについてこんなニュースをみました。


NISA投資、2階建てに 低リスク商品に20万円枠


政治家や官僚というものは、得てして制度をややこしくして利益を得ようとする生き物ですが、また変なものが出てきました。
NISAとはどうあるべきなのでしょうか。個人的にはいらない制度だと思い、その上で税率を調整するのが本筋と考えています。


NISAは何故出現したのか、まずは経緯を思い出しますと、元々株の売却益や配当の税率を20%→10%に軽減させる制度があり、これを終了する際にバーターというか個人の資産を少しでも株へ差し向けようとする意図で、導入されたものです。

そこへ、短期売買がどうのとか富裕層優遇だとかあれこれ言われて、つみたてNISAなるものが出現したり、NISAが終了するにあたりただ延長するのでは面白くないのか、こんな変な案まで出現してしまいました。

しかし、短期売買がというのはNISAの設計上仕方のないことであります。5年しか非課税枠がない上に、一般・特定口座との損益通算ができないので、必然そうなるのです。
S&P500のような、強固なトラックレコード持つものでさえ、20年ならともかく5年では短すぎて上がるか下がるかはわからないものであります。
そして、配当だけでは先ほどの損益通算の問題もあるので、非課税のメリットを活かしようがないわけです。

つみたてNISAは、20年という長さがありいい制度のように思えますが、40万円は流石に少なすぎるというのが感想ですが、それ以上に問題なのは、「特定の」投資信託にしか使えないことであります。
詐欺のような商品を排除したことで、金融リテラシーのない一般人には優しくなりましたが、我々のような米国株を嗜むものとしては、意図的にコストの高い日本の投信を買わざるを得なくなるという不合理です。
これは、米国株のETFであるVTIやVOOと、日本にあるそれらを対象とした投信や同等のS&P500のインデックス投信のコストを見れば一目瞭然です。
そうなれば、これは日本の金融会社を甘やかしているだけの利権制度と断じたくなります。


それでは、どういう制度が望ましいのでしょうか。
1つは、一般国民が老後に向けて必要な資産を構築できること。
もう1つは、それによって富裕層が優遇されないように、適正な課税をすること。
これが、制度として実現すべきことでしょう。

インデックスのくせに信託報酬が1%あったり、3%取ってもマイナスのアクティブファンドがあったり、これは投資に適していないものだと私も思いますが、それは非課税制度で何とかするべき代物ではありません。
金融機関や証券会社にもう少し公共性を意識させるようにするとか、利用者の金融リテラシーを高めるとかして、競争上負けて退場させるのが本筋です。
また、個別株を購入することが必ずしもリスクが高いとも言えません。それを制度で封じるのも不合理でしょう。

話を戻して、制度として実現すべきこととは、20%の申告分離の税率を所得に応じて調整することです。
個人的には、特に配当を重く見るべきで、たとえば年40万円までの配当を非課税にしてみるとかはいかがでしょうか。
配当の40万が富裕層優遇(笑)なのであれば、別に20万でもいいです。年間10万は少ないと思いますが。
配当に対してであれば、短期売買より長期投資を進めながらも制度上の不利益は少ないと思います。
逆に富裕層で配当や売却益の多い人からは、20%より多く、30%、40%としてもよいです。

今は源泉徴収が、別に源泉徴収した分から還付したり、さらに課税してもよいですし、そもそも源泉徴収を止めてしまっても良い訳です。
この電子化の時代、マイナンバーを適切に運用していれば、事務手続きなんて大したものではありません。
(紙ベースだったら、複数の証券会社のをマージするとか大変だと思いますが)


本質を見失わずに制度設計をして欲しいものですが、政治家や官僚は利権にしばられて動けないのでしょうか。このような問題が日本には多すぎます。
そういうところも、アメリカに投資をする方がよいと考える一因ですね。