2021年10月20日水曜日

2021年の衆院選

はじめに


自分がどこに投票するかを検討するために、公約を確認していくだけです。
その中で政党要件を満たす党で見ていくのが普通かと思いますが、実際には20~30程度の党がいくつかありまして、その様な党に投票しても現実的な効果が無い(全員当選したと仮定しても国会での影響力が限定的)と思いますので、除外しておきます。また、共産党については破防法に基づく調査対象であり民主主義の政党と見なさないため、除外します。
そのため、本稿では、自民党・公明党・立憲民主党・日本維新の会の4党のみと致します。

また、選挙は本来「人」を選ぶものであり、党を選ぶものではないということは、全く同意ですが現状の制度では、実質的に党を選ぶものとなっているため、党単位で政策を見た上で、個々の小選挙区で議員を見て、人物・行動・党政策と思想のブレ等から妥当かを判断するのがよろしいかと思います。

各党の公約


自民党


こちらのサイトを参考とします。
重点政策は、武漢肺炎対策、新しい資本主義…と続いていきますが、憲法改正がその一番後ろですね…。

公明党


こちらのサイトを参考とします。
重点政策は、子育て・教育、デジタル・クリーンによる経済再生、武漢肺炎対策のようです。

立憲民主党


こちらのサイトを参考とします。
重点政策は、武漢肺炎対策、1億総中流、カーボンニュートラル…と続いていきます。
まっとうな政治というのは政策なのか?という疑問は沸きますが。
(もっと言えば彼らがまっとうなのかは甚だしく疑問)

日本維新の会


こちらのサイトを参考とします。
重点政策は、国会・行政改革、税制・規制改革、社会保障・労働改革…と続いていきます。


政策の吟味


それでは各党の政策を吟味していきたいと思います。
本来であれば、戦略の階層でいうところの政策の上位概念である「世界観」から見ていくべきなのですが、それをまともに示している政治家・政党は皆無であるため、政策からの吟味になることをご容赦ください。
経済政策・国防・外交・社会保障・憲法改正の各分野についてみていきたいと思います。なお、武漢肺炎対策については、特にめぼしいものはなく、政党間で大きな違いが出せるものではなく、また今後終息する方向と考えるため、今回は吟味しません。
なお、点数は各項目100点満点とします。


経済政策


自民党は、新しい資本主義を掲げていますが、概略をまとめると、危機管理投資・成長投資・分配のようです。
筆者の印象としては、投資と言う名の「財政出動」が続く一方、規制緩和や減税・税制の簡素化への言及に乏しく、所謂大きな政府という印象を受け、これは安倍氏・菅氏の時代からの展開と受け取れます。投資を拡大すること自体は歓迎しますが、政治家あるいは官僚が適切な投資をできるとは考えにくく、民間の活力を活用する方向にならないものかと感じます。

また、今後問題になる可能性がある点として、企業が長期的な視点に立つよう、コーポレートガバナンスや企業開示のあり方を検討、具体的には四半期開示について触れています。このような制度を世界のデファクトスタンダードから離れた形にすることは、特に海外の投資家が日本市場を忌避することにつながりかねないのではないでしょうか。

財政出動そのものは評価しますが、方向性が間違っている項目が多く、20点とします。


公明党の経済政策では、個別事項の言及しかなくマクロな視点での政策に乏しいですが、これは自民党が担当ということなのでしょうかw

その中の方向性で見ると、中小事業者・飲食・観光・環境・デジタル分野にばら撒くという内容になっています。基本的には自民党の方針に付け加えるようなものであり、懸念点についても同じです。

そのため自民党と同じく20点とします。


立憲民主党は、実は以外と自民党と同じようなことを言っていたりします。党名を伏せて見られたら区別は…さすがにつきますが。
特に目立つのは、低所得者への現金給付と所得税・消費税の時限減税です。
現金給付の問題点は、時間・コストがかかることやそれによって何かを生み出すことがないのです。2020年時点では早くキズを癒すという発想でしたが、2021年になってもそれはどうかと思います。時限減税については、「時限」ではなく、恒久が望ましいですし、何なら消費税は廃止で結構です。

一方、増税にも触れており法人税の累進課税化、所得税の最高税率アップ、金融所得課税の累進課税化などが挙げられています。

ちなみに、公益資本主義を掲げており、その中には先ほど自民党で出たようなコーポレート・ガバナンス改革、短期主義経営の見直しが挙げられています。

ここは10点とします。多少、富裕層から取るという色が濃くなっていますが、その分金融緩和・財政出動の方向性が薄まっていると認識したためです。


日本維新の会はここでは大きく毛色が変わってきます。
消費税こそ時限かつ5%への減税ですが、所得税・法人税の減税を挙げており、税制の簡素・公平化に触れています。
財政出動についても触れていますが、偏重という印象はありません。

維新の会の良くない点は(他党も挙げていますが)、教育の無償化くらいでしょうか。教育の無償化は、費用対効果のよい政策とは思えないです。誰に対しても高等教育を受けさせれば、高度な仕事ができるというのは幻想です。また、「無償化」が生むモラルハザードは目に余るものがあります。真に優秀な学生について、学費を奨学金などのことはあっても良いと思いますが。

後は、私が見た資料が詳細版でなかったのかもしれませんが、具体的な数値目標がありません。「税制の簡素・公平化」と言われれば、二重課税や複雑な控除が無くなるのかと「想像」できますが、実際には書いていないので何とも言えないのです。

方向性については概ね賛同しますが、具体性が不足していることもあり、60点とします。


国防・外交


まずは自民党から。
外交については「自由で開かれたインド太平洋」等、日米同盟を基軸として、自由主義・民主主義・資本主義の各国と連携するスタイルは変わらないようです。
北朝鮮については、拉致被害者の即時帰国を求めること、核・ミサイルの放棄を要求すること。
支那については、ウイグル・チベット・モンゴル民族・香港等の諸問題と書かれていますが、肝心の主語である支那あるいは中共と言う文字が詳細な箇所にしかありません。非難決議の時の行動を見るにやる気のなさを連想させます。南朝鮮についても同様に詳細のみの記述でした。

国防については、防衛力を抜本的に強化、領海侵犯に対応、弾道ミサイル対する対処能力、重要土地等調査法の実行などが並びます。経済安全保障という概念がでてきたことは評価できるかもしれません。戦略物資や特許・技術の情報の管理、インフラの整備、サプライチェーンの確保、具体的な業種だと半導体関連の強化が並びます。

支那についての主語がないこと、露国についての言及がないため大幅減点は避けられないでしょう。また、国防については全く具体性に欠けており、今までの対応からすれば何も変わりませんということと理解せざるを得ません。
少なくとも、20世紀後半から国防の最重要ポイントである核に対する考え方、エネルギー・食料・原材料等のアウタルキーの確保、シーレーンの確保等は、当然考えられてしかるべき事項ではないかと考えます。

政権与党ということで厳しく見る向きもありますが、30点とします。


公明党については、核なき社会、支那を一衣帯水の隣国という誤った認識、露国との共同経済活動の具現化等論外の内容が続きます。
0点です。


立憲民主党は、支那や日米同盟については自民党と大差ない内容が続きます。QUADにも触れられているなど、意外といっては失礼ですがまともにも読めます。
しかし、辺野古移設、非現実的なリベラリズム的平和創造外交、核兵器廃絶、トドメにアジア太平洋・アフリカ諸国から積極的に留学生と高度人材を受け入れということで、やはり論外。
0点です。


日本維新の会は、リアリズムで安全保障と世界に向き合うとしており、防衛費のGDP1%縛りの撤廃を掲げています。外交方針は日米同盟を基軸とし、英・印・豪・台を重視するようです。
防衛費の1%ルールは全く非現実的なものであり、これの撤廃は大きく評価されるべきでしょう。一方で、何が敵国なのかと言う点については、記載がなかったので、その点は問題です。
どの党も支那と北朝鮮については言及するので紙面の限られたマニフェストであってもなければ、劣る印象を拭えません。
記述不足と具体性欠如がありますが、1%ルール撤廃を評価し、40点とします。


社会保障


自民党は、皆保険制度維持を掲げながら全世代が安心できる制度にするとしています。総合的な改革としかないので、具体的なことがわかりませんが。その他、緊急医療体制や医師の偏在も触れています。
少子化対策については待機児童や子供の支援体制の確率を挙げています。

はっきり言ってこれは議論の余地がありません。現状の制度の問題点がそもそもわかっていないと言わざるを得ないわけです。現在の年金・医療保険の体制が、なぜ持続的と思われていないのか考えたことが無いのでしょう。
世代間格差の是正、肥大する医療費の抑止といったことへの解が一切ないのです。政権与党が出したものがこれとは呆れかえる他ありません。
0点です。本音はマイナスですが。


公明党は、(経済ではなく社会保障に入れておきます)子育て世代への現金給付と出産一時金を重点に掲げています。一方、人生100年を見据えた社会保障の詳細は、医療や病気について結構細かく書かれています。これは政策のレベルを越して作戦のところまで行っている気がします。(すみません、私では是非が判断しかねる部分も多いです)
一方、先ほどの問題提起に該当する解と読める箇所はなさそうです。
一応この分野を重視する姿勢は買って、20点とします。


立憲民主党は、ここでも経済のところで同じ姿勢で、社会保険料や後期高齢者医療制度の応能負担を掲げています。一方、出費自体の抑制には関心が無いようです。
この分野にもちゃんと特大の地雷が仕掛けられていまして、社会保障などのモノサシを変えるとしています。興味深いので全文抜粋します。
公正な配分により格差を解消し、一人一人が幸福を実感できる社会を確立するため、社会保障などのモノサシを変えます。①社会保障の効果を測るモノサシは、格差是正とQOLを重視します。②豊かさを計るモノサシは、GDPからGPI(真の進歩指標)へ変更します。③税制を評価するモノサシは再分配を重視します。④将来経済推計のモノサシは、過大になる政府試算から国会に設置する機関による試算へ変更します。⑤官僚を評価するモノサシは、国民のための仕事を評価するようにします。
誤った認識によって物差しを変えてしまうというのはとても恐ろしい話です。
もちろん現状の物差しが正しいかと言う議論を否定するつもりはありませんが、明らかに特定の思想に沿うような変更であり、このような恣意的な物差しを使っては、政策がゆがむことは間違いないでしょう。
少しだけ賛意を示すなら、①の点QOLを重視して、やっても殆ど延命できないかむしろマイナスな手術や投薬、延命治療等が減ってくれればいいかもしれないです。
0点です。本音はマイナスですが。


日本維新の会は、給付付き税額控除やベーシックインカムを「負の所得税」実現のために検討するとし、医療制度については出来高払いから受診の質・価値への支払いへとなっています。
当方は以前から述べている通りBI推進派ですので、基本的には維新に賛成します。一方で、医療制度や年金制度はそれとは別枠(保険制度なので)であり、「負の所得税」実現時にどうするのか、当然その変化に大きな影響を受ける人(特に高齢者)にどうするのかということへの説明が必要になるでしょう。
また、「出来高払いから受診の質・価値への支払い」というのは、さすがにちょっとこれだけでは判断できないものがあります。
こちらも60点としておきましょう。


憲法改正


自民党は憲法改正を「目指す」とはっきり書いています。
現行憲法の基本原則を堅持しつつ、自衛隊明記、緊急事態条項、合区解消・地方公共団体、教育充実を加えるとしています。(かつての憲法案はどこへいったの?)

「基本原則を堅持」と言う言葉から推測されることは、9条はそのままにして後ろに3項を付けるか2項を書き換えるかということでしょう。
これでは支那や露国、朝鮮のような侵略国家に対し、有効な対応が取れるとは思えません。
平和主義を掲げる以上、日本から先制攻撃はないと敵国は安心できるわけです。抑止の大原則は国家のパワーである以上、それを縛るような憲法では、独立国家としての自存自衛を達成できるとは言えないでしょう。
私見ですが、衆院と参院のあり方についても触れて欲しいです。合区解消という言葉から、一票の格差から参院を除外して地域代表にするということなのではないかと考えられます。
現状、機能として衆参はカーボンコピー、あるいは一軍と二軍の状態です。一院制にすることで国会議員を減らす、あるいは全く別の制度にする、一例として衆院は全国比例にして国の代表、参院は各都道府県から4人(半期改選)で地域代表とするなどです。
後は、改正の発議を2/3から1/2にするのも必要でしょう。

ここは70点としておきます。


公明党は、従前の主張ですが加憲を主張しています。
9条については堅持するとし、自衛隊は国民に許容されていることを理由に、議論を続けるとします。加える内容は、緊急事態、新しい人権、環境保護などです。

「国民に許容されていること」と敵国に対して有効な軍隊であることは全く別のことなので、議論は筋違いと言わざるを得ません。
また、憲法というものを勘違いしているようですが、基本的に憲法は政府権力が主権者たる国民のコントロール下に置かれるために、権力を規制する内容になります。「国及び国民の地球環境保全の責務」とありますが、国や地方自治体はともかく、国民に対する義務を記載する場所ではありません。当然、現行憲法の国民の義務も削除されるべきです。

基本的に護憲側なので0点とします。


立憲民主党は、一応絶対憲法を改正しないという立場ではないようです。とはいえ具体的な改正等の指摘はなく、細かい憲法解釈の話ばかりが続くため、改正の意思はないものと見なします。
0点です。本音はマイナスですが。


日本維新の会は、教育の無償化、統治機構改革、憲法裁判所を明記するとしています。

教育の無償化については先ほど述べた通り、適当な政策ではありませんし、憲法に記載するレヴェルとしては細かすぎるというところです。

次に統治機構改革ですが、これは具体的に地方自治体に権限を寄せて、大局的に動かなければならないことについて中央が担当するという方向性であり、彼らの出現経緯からすると本命はこれでしょう。
私見では、反対します。市区町村ごとに細々とした対応を行うことはまず効率的ではありません。正直言って、今の地方自治体に権限を寄せるだけの、国民的支持・人材やリソース、能力があるとは思いません。
国会議員の選挙の投票率は惨憺たるものですが、輪をかけて地方の首長や議員の投票率は壊滅的です。無投票も多発しています。既に地方自治体は機能不全と化し始めている中で、なぜ彼らの権限を高めようとするのでしょうか。
まずは、地方自治体がちゃんと機能するようになってからでしょう。

憲法裁判所については、中立です。実害が無いと裁判所の判断が得られないことにより、内閣府法制局の権力が強くなりすぎている側面があると思われます。
一方で、過去の違憲裁判では統治行為論で逃げるケースも多く、裁判所が適格にかつ中立的に判断ができる環境が作れるのかと言う点を注視したいです。

自民党では記載のあった安全保障については維新は特に記載がありませんでした。国防のところで加点したものの、現行憲法と自衛隊の関係や他国への影響をどう考えているのかわからないのは厳しいです。

改憲姿勢を評価しての10点とします。


まとめ


各党の点数をまとめるとこの通りです。


残念ですが、投票に値する政党なしという評価になります。本来であれば。
ちなみに当方の選挙区は一応、自民vs立憲vs維新ですが、自民と立憲の候補が何回も戦っていて、比例復活込みでどちらも現職であり、当選可能性を加味すると実質2択という状況なので、30%vs3%の選択になります(支持率と近いなw)。

最後に、この結果をもって維新を推すとか維新に投票するとかは別の問題です。
冒頭でも言いましたが、掲げている政策がよくても実現可能性は別の問題であるということ、ある議員ないし政党を落選させるためであれば、最悪の一歩手前の選択でもすることは、当然あることだと思っています。

皆さんも政策は概要だけでも読んで、白票でもいいので投票所には行きましょう。