2020年12月29日火曜日

日本占領と「敗戦革命」の危機(江崎道朗著)

日本占領と「敗戦革命」の危機
日本崩壊の真の危機は戦後にあった。米中に浸透した共産主義者たちが仕組んだ敗戦革命プログラムの恐怖を白日の下に晒す驚愕の書。

はじめに


本書は、大東亜戦争~GHQによる日本占領の前期までにおける、共産主義者の動向とそれに対峙する昭和天皇や自由保守派の暗闘を示すものです。

これらの歴史から我々が学ぶべきことは、全体主義・共産主義がどのように社会を混乱させ、自分たちの都合の良い「革命」を起こすのかという一つの流れから、警察・公安・諜報の重要性です。

その一端を知るために、本書は有用な本ではないかと思います。


要約


個人的に現代に生きる教訓となるような箇所を抜粋しました。

第一~第三章


米国に潜むソ連のスパイや共産主義者と中共は、戦時中から既に「敗戦革命」は準備していました。
そのエピソードとして、共産主義者のフロント組織に堕ちたIPR(太平洋問題調査会)というシンクタンクというものがあり、これは民間のものでしたが、日本の支那「侵略」を非難するパンフレット(中共工作員が書いた!)をばらまいたり、戦後の日本占領計画検討に影響力を持っていたりしていたようです。

さらに、ルーズベルト政権下で組織されたOSS(戦略情報局)という情報機関も対日政策に大きな影響を与えていましたが、この組織にも共産主義者が多数入り込んでおり、情報機関のトップであるドノヴァン長官までもがNKVDに対し、欧州に潜入したOSS工作員のリストをソ連に渡そうとする有様であり、国を守るための情報機関が国益を害している有様であった。


一方、中共は、日本に留学経験のある者を使い、支那事変で日本人捕虜を獲得し、それを使って、日本軍や日本政府に影響力工作をもたらすことを目論んでいました。

ソ連は、日本人を過酷に扱いバタバタ死なせたのに対し、中共は手厚くもてなして日本人側に「恩義」を感じさせ、さらに自分たちを「日本人の敵」ではなく、「日本軍国主義の敵であり、抑圧された人民の味方」という二分法に基づく(このような手法は共産主義・全体主義者が革命に多用するロジックである)プロパガンダをしたそうです。その結果、彼らは積極的に中共に対し、協力するようになったそうです。
ちなみに、この中共延安に、コミンテルンの指示で派遣されてきたのが、野坂参三です。

さらに中共は、アジアに派遣された米軍にも接触し、国民党を貶める筋金入りの中共シンパの政治顧問が、ジョセフ・スティルウェル司令官の周りを固めていたようです。
OSSと中共、野坂も連携しており、野坂はアメリカのプロパガンダへの助言を行うなどの活動をし、OSSは中共に無線通信システムは汪兆銘政権への工作資金の提供などを行っていたようです。

第四章~五章


日本の降伏で問題だった点として、一つはルーズベルト政権下における「ストロング・ジャパン派」という日本をソ連に対抗するために使うために破壊しない派が、ソ連の息がかかった「ウィーク・ジャパン派」に敗れたこと、もう一つは日本自身がこのようなアメリカにも交渉可能な勢力があったことを理解せず、ルーズベルト政権が一枚岩と視野狭窄に陥り、その結果として、ソ連和平案しかないと考えたことで、さらに視野狭窄に陥ったことです。

もう一つ、軍幹部はアメリカが破壊する「国体」が右翼全体主義になっていたのではないか、それならば、資本主義・民主主義のアメリカより、共産主義(左派全体主義)のソ連と連携する方が良いと考えたのではないかという点も指摘します。

このような流れの中で、共産主義の危険性を指摘した「近衛上奏文」や、日本の徹底抗戦による「ウィーク・ジャパン派」の勢いが衰えた事などにより、昭和天皇のご聖断に至ったとします。


考察


本書で一番重要なことは、共産主義・全体主義が一般の人にとってどのように浸透していくかということを理解するが重要であるということです。
プロパガンダの基本的な手法である「二分法」は、アメリカにおいても日本においても格差の拡大によって、説得力を持ちやすい状況になってきています。

もう一つ挙げるならばは、昭和天皇のご聖断とその後の敗戦革命寸前の状況から日本を救ったという出来事が、なぜ実現したのかということです。
当時これを実現できた要因として、昭和天皇ご自身がインテリジェンスをご理解なさっていたこと、天皇陛下に対する国民の信頼が厚く天皇陛下の元に団結ができ、なおかつ天皇陛下もまた国民を信頼し分断ではなく団結を目指したことなどが本書では挙げられています。

今の憲法下では中々このように天皇陛下が直接的に動くことは難しく、また総理大臣以下の政治家には、残念ながら全くこのような役割は期待できないように思います。
そのような中で、敵国のプロパガンダに対し、日本の国体と自由・民主主義を御旗として、団結できるのか問われる時期が今なのではないかと思います。

では、このような状況を防ぐにはどうしたらよいかというと、私は教育以外にあり得ないと思います。全体主義が強制で自国の意思を拡散するのであれば、自由主義は知性で立ち向かうしかないでしょう。そうでなければ、全体主義と同じ方向に堕ちてしまいます。
自由主義を守るために、「自由を妨げる自由、秩序を妨げる権利は認めない」という最小限の制約であることが望ましいのです。

具体的に何を教育するといえば、歴史です。ナチスドイツやソビエトの様な全体主義が撒き散らす毒とその末路、彼らの手口を学び、自由主義・民主主義が現代人類の到達点として優れていることを理解することです。
日本人はまともな教育を受けていませんので、全体主義について非常に無理解であり、そのことが、金のために中共と容易に手を組んでしまう連中が多数生まれる原因になってしまいます。実際、中共をここまで育て上げたのは日本というのは、過言ではないでしょう。
2020年11月21日土曜日

目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画(クライブ・ハミルトン著)

目に見えぬ侵略
世論と政策のキーマンをどう操り、反対者を沈黙させるのか?  おそるべき影響力工作の全貌が白日の下にさらされる、禁断の書。 原著は大手出版社Aleen&Unwinと出版契約を結んでいたが刊行中止、その後も2社から断られた。 「(本書の)販売中止を決めた自粛は自己検閲だ」(フィナンシャル・タイムズ)と物議をかもし、 中国共産党の海外工作ネットワークをすべて実名入りで解明した、執念の本格研究、ついに全訳完成! 「世界各国のモデルになるのでは」とされる、ターンブル政権の外国人・企業からの献金禁止の法制化や 「スパイ活動」の定義拡大の動きに本書が先鞭をつけた。 「中国による浸透工作が半ば完了しつつあった時、強烈なウェイクアップコールとなったのが、 ハミルトン教授による本書「サイレント・インベージョン」である。本書はオーストラリアを変え、 アメリカにも大きな影響を与えた。」(監訳者解説より)

 

要約


この本は、チャイナがオーストラリアを”侵略”していく過程を白日に晒し、それによってオーストラリアの行動を変えた本だと思います。

本書の中でチャイナのやり方について、大きなポイントは以下3点だと感じました。
  1. 華僑をチャイナ共産党に従わせる僑務の存在
  2. チャイナマネー
  3. 「自由」「人種」「平等」といった西洋現代思想の徹底的な活用

まずは、僑務について。
私たち日本人を含めた、西洋……、いえ現代社会では、一般的に民族と国家というのは別の概念です。
つまり、日本人だとしても別に全ての日本人が、日本政府なり日本国と一体ではありません。具体的に言うと、日本人として日本国籍を持ち日本に住んでいれば、戦争になれば戦うと思いますが、外国に行って外国に帰化すれば、その外国人として戦うことになります。

しかし、チャイナはこれとは違う論理です。
チャイナ共産党(以下、中共)は、国籍を持つチャイナ人だけではなく、国籍を離脱したチャイナ系を含め、さらにはその子孫までも、中共の協力者として働かせることを企図しています。
そのための任務として、僑務はとても重要な役割を果たしていると指摘します。


2つ目のチャイナマネーは、日本でも比較的知名度が高いと思います。
チャイナマネーが通常の投資と異質なのは、それが全て中共の利益にそった運用をされるという点です。普通の企業は、自国政府の指導や命令に従って外国に投資することはなく、営利の追求を基本とします。だから、チャイナの投資は目的が違う以上、異なる基準が必要だと指摘します。
このような手法で自国企業を統制することは、軍事力で他国に強要するよりも安価かつリスクの低い手段を生み出します。これは「地経学」として知られます。


そして最後の西洋現代思想の徹底的な活用は、正当なチャイナへの批判や外国からの影響の規制を、レッテル張りして封じ込める典型的なやり方です。
例えば、チャイナマネーや移民について否定的な意見が出れば、それを「外国人恐怖症」と批判するといった内容です。

さらには、チャイナ留学生の活動については「寛容な言説」「多文化主義」に訴えかける一方で、ダライ・ラマを呼び大学で講演するとなれば「分離主義者」や「テロリスト」を招いてチャイナ留学生を侮辱すると主張するようなこともあるそうです。


考察


ここでは、この豪州の教訓を参考にし、日本でチャイナ勢力の浸透を食い止め、日本の中枢に影響を与えるチャイナ勢力を排除するために、どのようなことが必要なのかを考えてみたいと思います。
先ほど、上げたチャイナの侵略手法の3ポイントに対応させてみていきます。

  1. チャイナ人の入国、滞在、永住許可、帰化要件の見直し
  2. 地経学の普及、外国人献金の禁止、各種資本規制
  3. 自由を妨げる自由、秩序を妨げる権利は認めないことを明確化する。

本書から学べることは、チャイナ人は、普通の外国人とは違い、国を離れても中共の利益のために行動する存在であることを理解すべきです。もちろん、全てのチャイナ人がそうだとは言いきれないのは承知しています。しかし、そこにつけこむのが彼らのやり方であり、そしてそのような政権?王朝?を許容している以上、外国で区別されてしまうのはチャイナ人の宿命なのです。
そうであれば、普通の外国人と同じように、入国や永住等の許可を出すべきでないことは、当然の帰結であると言えましょう。

しかし、この手の内容を制度とするのは、至難の業だと思います。なぜなら、チャイナのプロパガンダとしてもそうですが、ナイーブな人とも戦わないといけないからです。

プロパガンダとナイーブな人に勝つためには、その焦点が「戦場」であることをはっきりさせ、悪く言えば「不安を大衆に煽る」ことで、世論を変えなければなりません。それを豪州で成し遂げたの本書なのでしょう。

世論ではなく、エリート層向けには、やはり地経学という新しい概念を普及させることが必要だと思います。
日本でも豪州でもそうですが、最初に「墜ちる」傾向があるのは財界です。
ここを落とされないようにするために、地経学が必要だと思います。チャイナマネーを賄賂としてもらって云々ということもありますが、多くの財界人は基本的にはチャイナの市場の大きさを、自身の機会と捉えているから、このようになっているのだと私は考えています。
しかし、チャイナの一見して機会に見えるものは、実際にそうではないかもしれないということを正しく理解するためには、地経学という概念を理解し、中共の手口を学ぶことが必要でしょう。

地経学を普及させ、エリート層に防衛の必要を理解させたとしても、実際にチャイナが札束で殴り掛かってることを止めることはできませんので、当然ながらそのお金の流れは止めなければいけません。
それが外国人献金の禁止(現行の政治資金規正法だけでは足りない!)や資本規制になります。

最後に、私が一番必要だと思うのは、「自由を妨げる自由、秩序を妨げる権利は認めない」ということです。
チャイナ人にだって、当然人権が認められるべきだと考えます。しかし、彼らが中共のコントロール下にあり、そして中共は明白な事実として、全ての人々に平等な自由や権利を保障・尊重する存在でないのです。
だからこそ、本書に出てくるチャイナ人のダブルスタンダード(チャイナ人の自由を主張しながら、ダライ・ラマや大紀元に反対する)のような形で権利を「乱用」するのです。

自由・人権・民主主義といった国際社会のメインストリームは、今までの歴史とは違う形で挑戦を受けています。しかし、人類にとってこのような価値観は、ベストかはともかくとしてベターであるということは、間違いないのではないでしょうか。
そうであれば、価値観を守るために修正された自由や権利に関する思想が出てくるものだと信じています。

個人的には、日本国憲法には、「公共の福祉」という便利な言葉がついていますので、この程度の権利の制限はさほど問題にはならないのではないかと考えています。
最も日本国憲法が権利を保障する対象は「国民」であるので、外国人に対して、それをどの程度保障するものなのかといえば、政治的な判断というのがあって然るべきということであり、つまりは国民世論によって動かすことが比較的容易な部分ではないかということです。



地政学という観点でチャイナを見るのであれば、この本がとても役に立ちます。

中国の「核」が世界を制す(伊藤貫著)


外国人の需要については、過去にもこのようなオピニオンを記載しました。

入管法改正に寄せてー日本における外国人とは